魚介類斃死(へいし)原因微細藻 [Toxic micro-algae for fish and shellfish]
これに関係する微細藻は多種類にわたり、渦鞭毛藻ではギムノジニウム、ノクチルカ、アムフィジウム、ペリジニウム、アレキサンドリウム、コクロジニウム、セラチウム、ヘテロカプサがあり、ハプト藻ではクリソクロムリナ、プリムネシウム、ラフィド藻ではシャットネラ、ヘテロシグマなどが知られている。また、珪藻でも斃死がおこるとの報告もある。
これらの微細藻が魚介類に斃死をもたらす要因には(1)微細藻自身がもつ毒性物質の産生(2)微細藻の分解による有毒物質の発生(3)微細藻の大量発生による酸素不足(4)微細藻が魚の鰓(えら)に詰まることのよる呼吸障害などが挙げられているが、詳しく解明されているものは少ない。
神経性貝毒の原因でもある渦鞭毛藻のギムノジニウム・ブレベ(Gymnodinium breve)はアメリカ、メキシコ湾沿岸で多くの被害をひきおこしており、その斃死の原因物質はポリエーテル化合物であるブレベトキシン(brevetoxin)と特定されている。
また、夜光虫のノクチルカ・シンチランス(Noctiluca scintillans)については1971年と1972年に香川県沿岸で大発生したとき、その魚毒性はアンモニアによることが明らかにされた。この夜光虫は大型(直径200um)の殻をもたない渦鞭毛藻で、細胞は球形または亜楕円形をしている。原形質は淡紅色で、光合成色素をもたず、捕食的な従属栄養を営んでいる。ときには自身の細胞より大きな稚魚や珪藻を捕食して変形することもある。この渦鞭毛藻による赤潮は桃色がかった赤色(トマトケチャップ色)をしているが、熱帯域では微細藻が共生しているので緑色をしている。
瀬戸内海を中心に被害が続出してきたラフィド藻のシャットネラ・マリナ(Chattonella marina)やシャットネラ・アンチクア(C.antiqua)では脂肪酸による説、ブレベトキシン説、呼吸に関係する酵素の阻害説などがあるが定説にはなっていない。シャットネラ属の細胞は球形ないし紡錘型で比較的大型(細胞長: 30-130um)である。細胞壁がないため形が変化しやすく、細胞のほぼ前端に2本の鞭毛がある。わが国での最近の大きな被害は渦鞭毛藻のヘテロカプサ・サークラリスクアマ(Heterocapsa circularisquama)によるもので、三重県沿岸で大量に発生し、養殖中のアコヤガイの大量斃死をもたらした。この藻種は小型の殻をもち、細胞の長さは20-29μm、幅は14-20μmである。しかし、この藻種による二枚貝の斃死のメカニズムについては今のところ不明である。
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