頭足類の発光器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/19 08:59 UTC 版)
イカ(十腕類)では、コウイカ類(コウイカ科)を除くグループ(ツツイカ類・ダンゴイカ類・ミミイカ類)で発光器を持つことが知られている。特にクラゲイカ科は全種が発光し、ほかにもツメイカ科、ヤツデイカ科、アカイカ科などでも発光することが知られている。イカ全体の45%に当たる200種以上が発光を行う。浮遊性のタコ(八腕類)でもナツメダコのように発光する種が2種のみであるが知られている。逆に、底生のタコや底生であるコウイカ科は発光を行う種はいない。 発光の主な目的は自分の姿を敵から隠すため(カウンターシェイディング、カウンターイルミネーション)であるとされる。遊泳しているイカの下から捕食者が現れた場合、明るい水面に対し自分の姿が影になって発見されてしまうが、外界の光の強さに合わせて発光量を調整することで影を消す。半透明の体を持つ外洋性のホオズキイカ類では、唯一影をつくる肝臓と眼の下に発光器を持つ。それ以外にも、逃走の際の目眩まし(威嚇発光)や触腕の先に発光器を付け餌をおびき寄せるルアーとして、また仲間同士の意思疎通として発光が用いられる。 ホタルイカモドキ科 Enoploteuthidae は40種程度知られているが、その全てが発光する。種によって発光器の配列や密度が異なる。ホタルイカ Watasenia scintillans では皮膚(外套膜腹側全面)、眼球、第4腕先端に3種類の発光器をもち、それぞれ少しずつ構造が異なる。いずれも発光細胞から光を出し、反射板、フィルター、導光域、レンズを具える。外套膜腹面には約500個の皮膚発光器、第4腕先端にはゴマ粒状の3個の発光器、眼球腹側には5個のビーズ状の発光器が並ぶ。第4腕先端にある発光器は敵の目眩ましに用いる。ナンヨウホタルイカ Abralia andamanica では外套腹面には大小約500個の発光器を散在し、眼球には両端に2個大きく不透明の、中央に橙色でガラス様である3個の計5個の発光器があるが、腕先端の大型球形発光器は持たない。また、ホタルイカモドキ属 Enoploteuthisでも、腹側の発光器の配列が分類形質として用いられる。 ホタルイカは青一色の発光器を持つ。周南極海域に生息する外洋性のホウセキヒカリイカ Lycoteuthis lorigera では、1個体で赤、青、緑、黄色といった何色もの発光器を持つ。ホウセキヒカリイカの発光器は触腕柄に5個埋在し、眼球腹面に5個(うち中央のものは紫青色、残りの4個は赤色)ある。さらに外套腔の肛門両脇に赤色発光器が1対、鰓基部付近に1対、その間(胴体)に大1個小2個の発光器が横に並び、内臓嚢後方にも3個ある。
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