陸地・埋立混成案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 05:23 UTC 版)
「普天間基地移設問題」の記事における「陸地・埋立混成案」の解説
埋立案を巡る動きでは人工島案で太田建設が先行したが、続けての動きは基本案が表明された翌年の、1998年春頃から顕在化してきた。これはアメリカ最大の(世界最大の)総合建設大手であるベクテルと伊藤忠商事、及び国内ゼネコンと沖縄の大手建設会社(東京新聞記者の半田滋によれば國場組)が組んだものである。 案の概要としては辺野古沖の珊瑚礁リーフの内側200-300haを埋め立てて2400mの滑走路を建設、陸地部分にも基地施設を建設する。総工費は2000-3000億円とされている。ネックとしては当時顕在化したばかりのジュゴン生息海域と言う材料を元に自然保護団体が反対運動を行う可能性があったこと、および集落に近いことである。後者については近隣の丘陵部にニュータウンを建設して集落を移転する案を提唱しており、過去成田空港や小松空港でこの策を実施した例が紹介されている。 『Themis』誌によれば本案に先立ち、大田が知事であった1998年4月に、アメリカ本社の副社長と日本支社代表が副知事を尋ね、「沖縄で見込まれる大規模な公共事業に参入していきたい」と申し入れ、国際貿易による振興策を唱えていた大田県政に対して、自由貿易を基礎とする沖縄経済の将来像をまとめた報告書を渡している。稲嶺が立候補した際にもベクテルは関心を示し「陸上部に軍民共用空港を造る」という稲嶺の案はベクテルの提案とアドバイスを基にしていると言う(選挙公約では滑走路は2500m。いずれにせよSACO報告での1500mより引き伸ばされていることを守屋昌武は指摘している)。以降、QIPと沖合いポンツーン式とで入り乱れた状態となる。稲嶺当選後の1999年8月には、知事後援会の政策委員会が、辺野古地区が最も適しているとの見解を打診し、想定工法としてはベクテルの示した混成案に高い評価を与えていると言う(後援会については琉球新報も触れている)。アーミテージは公式に評価する意見を表明し、別の高官は「メガフロート案はもう最良の案ではなくなっている」と非公式に日本政府に伝えてきていたと言う。政治的な面としてはベクテルを通じて国防総省、国務省に太いパイプが存在するという強みがあった。Themisによればベクテル案は沖縄県だけでなく、米軍の意向も反映した案であるため、重要度が高いのだと言う。そのため、外務省、防衛庁にはベクテルの混成案で解決を図ろうと動く向きもあった。
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