除草剤をめぐる問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 01:10 UTC 版)
吸収移行型の非選択的除草剤パラコートは、作物栽培前に全ての植物を枯らすために用いられる。これは活性酸素の発生により作用するが、動物やヒトに対しても毒性が強い。除草剤の中では最も急性毒性が強いものであり、ときに自殺に使われて(ただし解毒剤が存在しない上にすぐには死ねず、甚だ悲惨な症状を呈する)問題となる。 2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸 (2,4,5-T) は、1970年代に広く使われた広葉用除草剤である。2,4,5-T自体の毒性はあまり強くないが、2,4,5-T製造過程で不純物として、微量の2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(TCDD)、いわゆるダイオキシン類の一種が合成されるため、問題となった。TCDDは非常に毒性が強い。2,4,5-Tは、アメリカ合衆国では1983年に失効した。 日本では、催奇性などの疑いから1975年に失効した。国有林における植林時の使用を林野庁は1971年に止めたが、メーカーに返却したのは残量の6割余りで、26トンは17道県の50市町村(現在は42市町村)の国有林に埋めた。セメントと土に混ぜるという手法自体が土壌汚染防止に不十分と指摘されているほか、セメントと混ぜずに処分した出先機関もあり、豪雨や地震に伴う飛散が懸念されている。 オレンジ剤(いわゆる枯葉剤)は、ベトナム戦争で盛んに使われた。これは2,4,5-Tや2,4-Dの混合剤であるが、一般の2,4,5-T剤よりさらに多くのTCDDを含んでおり、実際にベトナムで健康被害の原因となったのではないかと指摘されて問題となった。 日本でも、かつて除草剤2,4-Dやクロルニトロフェンなどに、微量のダイオキシン類が含まれていたことが明らかにされ問題になったが、現在登録されている農薬には、ダイオキシン類は全く含まれていない。 また、日本で1970年代まで販売されていた、高純度(98%程度)の塩素酸ナトリウムを有効成分とする除草剤は、爆薬に転用可能であり、極左テロ集団による爆弾テロ(連続企業爆破事件)に用いられたことから、炭酸ナトリウムなどを混合して塩素酸ナトリウムの配合を下げる(50%程度)とともに、販売管理を記録する法的管理が強化された。
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