降下および着陸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 19:43 UTC 版)
「オートローテーション」の記事における「降下および着陸」の解説
ヘリコプターにおける「オートローテーション」とは、メインローター・システムがエンジンから切り離され、ローターブレードがローターを下から上に通る空気流のみによって駆動されながら降下することをいう。「フリーホイール機構」とは、エンジンの回転速度がロータの回転速度より遅くなると切り離される、特殊なクラッチである。エンジンが故障した場合、フリーホイール機構がメインローターからエンジンを自動的に切り離し、メインローターが自由に回転できるようにする。 オートローテーションを行う最も一般的な理由は、エンジンの不具合または故障であるが、オートローテーションにおいてはトルクがほとんど生じないため、テールローターが故障またはその機能を完全に損失した場合にも行われる。また、十分な高度が確保されている場合は、オートローテーションはボルテックス・リング・ステートからの回復操作にも用いられる。いずれの場合においても、安全に着陸できるかどうかは、オートローテーションを開始する時のヘリコプターの高度と速度に左右される(height-velocity diagramを参照)。 エンジンに故障が発生する前の状態では、メインローター・ブレードは、その迎角と速度により揚力および推力を発生している。エンジンに故障が発生し、パイロットがコレクティブ・ピッチを下げて推力及び抗力を減少させると、ヘリコプターは降下を開始し、ローター・システムを上方に通過する空気の流れが生じる。この空気の流れは、ヘリコプターが降下している間、メインローターの回転速度を維持するために必要な推力を発生する。オートローテーションの間、テールローターは、メインローター・トランスミッションにより駆動されるため、通常の飛行時と同じように機首方位をコントロールすることができる。 オートローテーションの降下率に影響を与える要因には、密度高度、全備重量、ローター回転速度および前進対気速度がある。降下率のコントロールは、主として対気速度により行われる。対気速度は、通常の飛行と同様に、サイクリック・ピッチ・コントロールで増減することができる。降下速度は、対気速度がゼロの時は高く、ヘリコプター機種および前述の要因の影響を受けるものの約50〜90ノットの時に最小となる。対気速度が最小降下速度が得られる速度以上に増加すると、降下速度は再び増加するようになる。ただし、対気速度がゼロの場合であっても、ローターは、パラシュート並みの抗力係数を有しているため、十分にその効果が得られる 。 オートローテーションでの着陸においては、回転するブレードに蓄えられた運動エネルギーを利用して降下率を減少させることにより、緩やかに着陸する。高い降下率で降下するヘリコプターを停止させるためには、降下率が低い場合よりも多くの運動エネルギーが必要となる。このため、極端に低いまたは高い対気速度でオートロ降下を行うことは、最低降下速度が得られる状態で行うよりも危険を伴う。 ヘリコプターは、それぞれの機種に応じて、パワーオフ状態の時に最も効率的に滑空できる対気速度がある。最良の対気速度においては、最小の降下率で、最大の滑空距離が得られる。その対気速度は、ヘリコプターの機種に応じて異なるだけではなく、特定の要因(密度高度、風など)によっても異なる。このため、ヘリコプターのオートローテーション速度は、機種に応じ、平均的な気象および風量ならびに通常の搭載量に基づいて設定される。 高密度高度または高風速環境下において重荷重状態で運用されるヘリコプターでは、降下時の対気速度を若干増加させることにより、最良の性能が得られる。一方、低密度高度において軽荷重状態で運用される場合は、通常の対気速度よりも若干低下させることにより、最良の性能が得られる。このように環境に応じて対気速度を調整することにより、いかなる環境においても、おおむね同じ滑空角でオートローテーションを行い、接地目標地点に進入することが可能となる。最適な滑空角は、通常は17度から20度である。
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