防災まちづくり要旨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/26 20:29 UTC 版)
「防災まちづくり」の記事における「防災まちづくり要旨」の解説
多くの市町村が取り組む防災まちづくりには、いくつかの特徴がある。 第一に、想定される河川氾濫・津波など災害への物理的な防災策を講じるための都市計画であり具体的にはダムや堤防、防潮堤などの防災施設の建造である。岩手県普代村や洋野町では、M9.0という東北地方太平洋沖地震においても高さ15.5mの普代水門(1984年完成)や太田名部防潮堤(普代村)や高さ12mの防潮堤(洋野町)が破壊されずに津波を大幅に減衰させ、実質的に津波をはね返したため、それらの地域の貴重な人命と財産を守った。普代村では2011年の東北地方太平洋沖地震において被災した民家は無く、死者はゼロである。普代水門自体は、事業計画時に15.5メートルは高すぎるとして非難を浴びたが、当時の村長である和村幸得が「15メートル以上」と譲らず、防災のための財政支出を惜しまなかった。その村長の決断が村を救い、そしてこの事例により、地震や津波などの防災のための公共事業の重要性が再確認された。 さらには、減災である。防災施設の建造だけでは不十分であり、既存の防災事業のような、災害の被害を0にすることを前提として万遍なく防災対策を施すのみでは、阪神淡路大震災や東北地方太平洋沖地震のようないざ行政の想定をはるかに超える災害に見舞われた際に対応ができない。ゆえに被害を0にするよりも、被害が出ることを想定、被災を覚悟した上で、最も被害が想定される部分に対して集中的に対策をとることにより、結果として災害の被害を最小化しようという取り組みである。その具体的な取り組みが事前復興であり、災害が発生した時のことを考えて、震災時の出火による延焼を防ぐ耐火性の強化や倒壊による圧死、生き埋め(阪神大震災の死者の8割は圧死による即死だった)の可能性を減らすため、建造物の耐震性強化への取り組みの他、倒壊や出火、混雑により避難路が封鎖されるなどの事態を避けるため、道路の幅を拡大するなどの施策が推進されている。 また、協働も重要な防災策である。災害の被害を最小化させる上で、行政単独による取り組みでは不十分であり、市民や企業をはじめとした地域構成員全体の連携協力をしていこうというものである。 また、その地域構成員全体が協働して防災まちづくりを推進する上で、特に不可欠とされているものとして、地域力の醸成がある。これは、市民をはじめとした地域構成員に対して地域に対する関心を深めてもらい、その上で地域構成員間での交流を深めておくことで、いざ災害が発生した際にお互いに助け合う関係を形成しておくことが期待される。その意味で、今日では、地域力醸成もまた、防災まちづくりにおける取り組みとして認識されつつある。
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