閏月の実例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/22 01:57 UTC 版)
以下は太陰太陽暦における閏月の加わり方について、明治3年(1870年 - 1871年)を例とし表を用いて解説する。日本の暦は明治5年に太陰太陽暦(天保暦)から太陽暦(グレゴリオ暦)に切替わったが、その二年前の明治3年は閏月のある最後の年であった。表は国立国会図書館デジタルコレクションの『明治三庚午暦』、『明治四辛未頒暦』、『明治五壬申頒暦』をもとに作成した。 太陰太陽暦の詳細については他項に譲るが、ごく簡単に触れておくと以下の通りである。 現在の太陽暦の「月」の日数は「31日」、「30日」、「28日」または「29日」の四つだが、太陰太陽暦では月の満ち欠けに基づく「30日」と「29日」の二つであり、「30日」を「大の月」、「29日」を「小の月」とする。しかもこの月の大小は、月の満ち欠けの仕方などによってその順番が年ごとに変わる。以下の明治3年の例では小・大・大・小・大・小・大・小・大・小・小・大・小の順となっている。そこに、約15日おきに定められる二十四節気の節気と中気を月ごとに割り振って暦を用いている。 明治3年月日付1234567891011121314151617181920212223242526272829301月(小) 立春1月 雨水1月 - 2月(大) 啓蟄2月 春分2月 3月(大) 清明3月 穀雨3月 4月(小) 立夏4月 小満4月 - 5月(大) 芒種5月 夏至5月 6月(小) 小暑6月 大暑6月 - 7月(大) 立秋7月 処暑7月 8月(小) 白露8月 秋分8月 - 9月(大) 寒露9月 霜降9月 10月(小) 立冬10月 小雪10月 - 閏10月(小) 大雪11月 - 11月(大)冬至11月 小寒12月 大寒12月 12月(小) 立春1月 - 上の表で見られるように、ひと月の内にそれぞれ節気と中気が割り当てられており、1月から10月までの節気と中気は本来割り当てられた通りの組合せとなっている。しかし10月の次は「閏10月」となり、閏10月には本来11月の節気である「大雪」だけが入る。 10月の次をそのまま11月にすると、11月の中気である「冬至」がその次の12月に来る。つまり日付よりも二十四節気のほうが遅れることになる。そこで本来割り振られた中気が来ない月は閏月とする太陰太陽暦の決まりに従い、11月になるところを閏10月とし、「冬至」が12月に来ないようにした。 閏10月の次の11月は、「冬至」のほかに12月の節気と中気である「小寒」と「大寒」を含み、12月には1月の節気である「立春」が15日にきている(年内立春)。節気と中気が本来割り振られた月に無く、二十四節気が日付から見て半月ほど先に進んでいるが、太陰太陽暦は中気を暦の基準とし、中気が本来割り振られた月の内に来る事を肝心とする。閏月を入れたことによって、次の年の明治4年では中気がその通りにおさまっている。 明治4年月日付1234567891011121314151617181920212223242526272829301月(小)雨水1月 啓蟄2月 - 2月(大)春分2月 清明3月 3月(小)穀雨3月 立夏4月 - 4月(大) 小満4月 芒種5月 5月(大) 夏至5月 小暑6月 6月(小) 大暑6月 立秋7月 - 7月(大) 処暑7月 白露8月 8月(小) 秋分8月 寒露9月 - 9月(大) 霜降9月 立冬10月 10月(小) 小雪10月 大雪11月 - 11月(小) 冬至11月 小寒12月 - 12月(大) 大寒12月 立春1月 また節気と中気の来る月々の日付は次第に遅れている。上の明治4年の表では「雨水」が1月1日、「春分」が2月1日、「穀雨」が3月1日に来ているが、「小満」は4月3日、「夏至」は5月5日、「大暑」は6月6日、「処暑」は7月9日…と、次第に日にちのずれが大きくなっている。 これは上でも述べたように、約十五日おきに定められる二十四節気が一巡する日数よりも、月の満ち欠けの繰り返しによる一年のほうが短いからで、このまま暦を使えば日付と二十四節気はずれを積み重ね、本来割り振られた月に節気と中気が戻る。ただしこの明治4年では、まだ各々の節気が本来より一つ前の月に来ており、年末に「立春」がある。次の明治5年では日付と二十四節気のずれはさらに重なり、6月からは本来の節気と中気の組合せに戻っている。閏月の入る太陰太陽暦は、おおよそこうした流れの繰り返しで成り立っている。 明治5年月日付1234567891011121314151617181920212223242526272829301月(小) 雨水1月 啓蟄2月 - 2月(大) 春分2月 清明3月 3月(小) 穀雨3月 立夏4月 - 4月(大) 小満4月 芒種5月 5月(大) 夏至5月 6月(小) 小暑6月 大暑6月 - 7月(大) 立秋7月 処暑7月 8月(大) 白露8月 秋分8月 9月(小) 寒露9月 霜降9月 - 10月(大) 立冬10月 小雪10月 11月(小) 大雪11月 冬至11月 - 12月(大) 小寒12月 大寒12月 明治5年11月9日(1872年12月9日)、太陰太陽暦を廃止し太陽暦に改める旨の詔書が政府より発せられ、同年12月3日にはこの日が太陽暦に基づき明治6年(1873年)1月1日と定められた。よって本来大の月である明治5年12月は公式には2日しかないことになった。
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