鍵 The Key
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「アシモフのミステリ世界」の記事における「鍵 The Key」の解説
※初出『F&SF』1966年10月号。ウェンデル・アース博士もの。 ジェニングスとストラウスは、月面で宇宙船の一部のようなものの残骸を見つけた。母船に持ち帰って調べると、きわめて古い人工のものであるが、この付近で遭難した宇宙船の記録はない。二人は異星人のものと結論づけて、さらに証拠となるものを探した。いくつもの破片のほかに、土に埋もれた装置らしきものも見つかった。この装置の前で二人が討論し、感情がたかぶったときに装置の表面が光った。二人はお互いの心のなかを見た。ストラウスという男は、自分たちが真の人間であると信じ、人類の多様性と融通性を破壊しようする「ウルトラ党員」だった。その装置が人間の感情を増幅することがわかった。また二人のうちで、装置を扱えるのはジェニングスだけだ。これをウルトラ党に渡すわけにはいかないと考えたジェニングスは、ストラウスの行動を抑えるよう念じながら、滑走艇に向かった。一瞬だけ抑える力が弱まったとき、ストラウスはナイフを使った。ジェニングスが激痛に悲鳴をあげると、ストラウスはのたうち回っていた。装置が感情を増幅して伝えたのだ。怪我を負いつつも滑走艇に乗りこんだジェニングスは離陸した。追跡を恐れて無線は使わなかった。艇の中には宇宙服も医療品もあったが、出血多量で死ぬのは時間の問題だ。なんとか装置を隠したジェニングスは、隠し場所のヒントを記したメモを残して死んだ。 ジェニングスの死体とメモは発見された。ストラウスは心を失って精神錯乱状態になっていた。メモには7つの記号と、地球を指した矢印ひとつが書かれている。記号を分析すると、月面のクレーターの名前を表しているようにも思える。矢印のほうは、地球が頭上に見える場所を示しているようにも見える。でもこれだけでは、広い月面から装置を探し出すことは不可能に近い。ジェニングスが大学生のとき、ウェンデル・アース博士の講義を受けていたことが判明したとき、一人の男が言った。「地球に向けた矢印は、アースに会えの意味ではないか?」。 アース博士のもとを訪れた連邦検察局の一行は、これまでのいきさつを話し残されたメモを見せた。博士はジェニングスとメモとの関連を考えていて、思い出したことがあった。ジェニングスは駄洒落が好きだった。地球への矢印は、アース博士へ行けに間違いないだろう。他の7つの記号は意味あるものとは思えない。目くらましのためでたらめに書いたようだ。メモは隠し場所への「鍵」を示しているが、それは個々の記号ではない。このメモ用紙全体が鍵(鍵は英語でクルー)の意味だ。かつてクローという名の数学者で天文学者の、ドイツのイエズス会士がいた。クルーとクローを駄洒落にしたのではないか。クローはラテン語で「クラヴィウス」になるが、クラビスというラテン語にも鍵という意味があり、これも駄洒落だ。従ってクラヴィウス・クレーターの、地球が最も高く見える場所を探しなさい、と指示した。アース博士が要求したのは、乗り物嫌いの博士を旅行に連れていこうとする姪を説得してもらうことだった。
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