過敏症症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 07:03 UTC 版)
アバカビルに対する過敏症は,ヒト白血球抗原B遺伝子座の特定の対立遺伝子、即ちHLA-B*5701と強く関連している。HLA-B*5701の保有率と人種との間には関連性が認められる。HLA-B*5701の保有率は、ヨーロッパ系アメリカ人で平均3.4~5.8%、インド系アメリカ人で17.6%、ヒスパニック系アメリカ人で3.0%、中国系アメリカ人で1.2%と推定されている。アフリカ系集団におけるHLA-B*5701の保有率には大きなばらつきがある。アフリカ系アメリカ人におけるHLA-B*5701の保有率は、平均で1.0%、ナイジェリアのヨルバ族では0%、ケニアのルヒヤ族では3.3%、ケニアのマサイ族では13.6%と推定されているが、これらの平均値は標本集団内での頻度の変動が大きいことに由来する。 過敏症症候群では以下の症状が多臓器および全身に発現する。 皮疹 発熱 胃腸症状(嘔気、嘔吐、下痢、腹痛等) 疲労感、倦怠感 呼吸器症状(呼吸困難、咽頭痛、咳等)等 過敏症症候群の症状は、通常、アバカビルを使用した治療後6週間以内に現れ、HIV、免疫再構築症候群、他の薬剤に関連する過敏症症候群、感染症の症状と混同される事がある。米国食品医薬品局(FDA)は、2008年7月24日にアバカビルおよびアバカビルを含む医薬品に関する注意喚起を行っており、FDAが承認したアバカビルの添付文書では、HLA-B*5701対立遺伝子の治療前スクリーニングと、この対立遺伝子を有する被験者に対する代替療法の使用が推奨されている。更に、臨床薬理遺伝学実装コンソーシアム(CPIC)およびオランダ薬理遺伝学作業部会(DPWG)も又、HLA-B*5701対立遺伝子を持つ個人に対して、代替療法の使用を推奨している。 アバカビルに対する過敏性反応の有無を判定する為に、皮膚パッチテスト(英語版)が行われる事があるが、AHSを発症し易い患者でもパッチテストに反応しない場合がある。 アバカビルに対する過敏症の疑いが生じた場合、HLA-B*5701対立遺伝子を持たない患者を含む全ての患者で、アバカビルの治療を直ちにかつ永久に中止する必要がある。2011年3月1日、FDAは、アバカビルの安全性に関する継続的なレビューを行い、本剤に関連して心臓発作のリスクが増加する可能性があることを通知した。しかし、FDAが実施した26の研究のメタアナリシスでは、アバカビルの使用と心臓発作との関連性は認められなかった。
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