農業機械の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 01:32 UTC 版)
農業機械の特徴として、車両の形態をするものが多いということが挙げられる。農業機械が車両の形態をするのは、農作業の対象である大地や植物を移動させることができないので、機械のほうを移動させて目的の作業を行うより仕方がないからである。この記事の節「車両としての農業機械」も参照のこと。 農業機械は雨の中、土や泥の上で酷使されるので、ある程度頑丈、堅牢につくられる。気候や土地といった自然条件や作物の特性など、個々のユーザーごとに使用する環境が異なるため、ユーザー自身が整備や改造を行う傾向がある。近年まで、堅牢性の観点から電子制御や電気モーターが嫌われ、カムやリンク、ローラーチェーンやベルトによる機構が好まれる傾向があった。必要とされるニーズに応じて仕様が多様化しやすいことから農機メーカーは少量多品種生産になりやすく、開発においてはユーザーからのフィードバックに重きが置かれる。 現在日本で発売されている乗用トラクターやコンバインは電子制御を搭載している。自動車で採用された技術の1世代、2世代前にあたる、成熟した技術が用いられる。これは、悪条件下での信頼性を優先することや、農業機械では自動車排出ガス規制やNOx規制が近年まで適用されなかったということもある。 一部の農業機械は、価格のわりに使用頻度が低いことで特徴づけられる。使用頻度が低くなるのは、農作業が季節的なものだからである。特に稲作においては田植・刈取等のスケジュールに厳密さが要求され、共同利用によるコスト低減は難しい状況である。日本の本州中部の稲作農家の場合、150万円の田植機を使うのは1年に5日間、400万円のコンバインを使うのは1年に2日間、ということも珍しくない。 日本では、大型のコンバインハーベスターの価格は1000万円程度であり、大型トラックや建設機械の油圧ショベル、工作機械のマシニングセンタの価格に匹敵する。しかるにコンバインハーベスターは年間数十日しか稼働せず、トラックや油圧ショベルやマシニングセンタが年間数百日稼働するのとは対照的である。 一方で、畜産機械など柔軟なスケジュールでの運用が可能な農業機械は、コントラクター(作業受託組織)を利用した共同利用が近年急速に進んでいる。日本では2005年現在全国に437のコントラクターが存在し、中でも北海道等の地域では現在、農協主導で、草の刈取、デントコーンの収穫、サイロ作業、融雪剤散布作業など広範囲な作業が委託されている。
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