軌道と輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/15 02:58 UTC 版)
ディオルコスは硬い石灰岩で舗装された道であり、約1.6メートル離れて平行に溝が刻まれていた。道の幅は3.4メートルから6メートルであった。古代の文献は、どのように船が運ばれていたかについてほとんど触れていないので、船の輸送手段はおおむね考古学的な証拠に基づいて復元されたものである。この軌道から、ディオルコスによる輸送はある種の車輪の付いた車両によって行われていたことを示唆している。船と貨物を異なる車両に載せて運んでいたか、あるいは貨物のみを運んで地峡の反対側で異なる船に再搭載していた。 技術的な検討によれば、25トンで全長35メートル、幅5メートルの三段櫂船を運ぶのは難しかったものの、技術的には可能であったが、普通は大型の船というよりは小型のボートを運んでいたものと推定されている。輸送中に竜骨を損傷するのを避けるため、hypozomataという太いロープを船首から船尾まで張り渡して、船体が垂れ下がったり上反りになったりするのを避けなければならなかった。船と貨物は、人や動物がロープ、滑車装置、そしておそらくキャプスタン(英語版)によって牽引していた。 科学者のトーリーは、地峡を越えて船を牽引するために必要な労力を見積もろうと試みた。水の浸み込んだ三段櫂船を、それを搭載した車両込みで38トンであると仮定し、また1人の人間が長期間にわたって発揮できる力を300ニュートンとすると、牽引チームは勾配や軌道の状態にもよるが、112人から142人が必要であり、合計した牽引力は33から42キロニュートン(3.8トン重)であるとした。車両の速度を上げるためには180人が必要であろうとした。時速2キロメートルの速度で全長6キロメートルの行程を前提とすると、海から海までの移動には3時間がかかると見込まれた。 より少ない負荷と転がり抵抗を前提としたラエプセトは対照的に、最大牽引力を27キロニュートンと計算し、これによればいくらか少ない牽引作業者で済むことになる。こうした条件下では、牛による牽引も可能であっただろうが、トーリーは牛の牽引力は比較的減殺されるとしてこれに反論している。しかしどちらの設定にせよ、ディオルコスに必要な労力はかなりのものであるとみなければならない。
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