軌道と電子対
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/30 23:21 UTC 版)
このように電子の配置は軌道と対応付けられる。そして電子の属する軌道の種類に応じて、電子も分類されて呼称される。 s電子 - s軌道上の電子。基底状態で、1s電子、2s電子、3s電子、4s電子、5s電子、6s電子、7s電子の存在が確認された。 p電子 - p軌道上の電子。基底状態で、2p電子、3p電子、4p電子、5p電子、6p電子、7p電子の存在が確認された。 d電子 - d軌道上の電子。基底状態で、3d電子、4d電子、5d電子、6d電子の存在が確認された。 f電子 - f軌道上の電子。基底状態で、4f電子、5f電子の存在が確認された。 なお、電子はフェルミ粒子なので1つの軌道には、お互いに逆向きのスピンを持った2個の電子しか収容できない(パウリの排他原理)。このように軌道が2つの電子によって占有された状態を電子対と呼ぶ。 言い換えると、2p軌道には最大6個の電子が収容される。同様にd軌道には最大10個、f軌道には最大14個の電子が収容され得る。 以上をまとめたのが下表である。 主量子数 (電子殻)方位量子数磁気量子数軌道名収容できる電子数1(K殻) 0 0 1s 2 2(L殻) 0 0 2s 2 1 0, ±1 2p 6 3(M殻) 0 0 3s 2 1 0, ±1 3p 6 2 0, ±1, ±2 3d 10 4(N殻) 0 0 4s 2 1 0, ±1 4p 6 2 0, ±1, ±2 4d 10 3 0, ±1, ±2, ±3 4f 14 水素のような1電子系では電子の持つエネルギーは主量子数 n によってのみ決まるが、一般に原子は多電子系であり、電子同士の反発により各軌道のエネルギーに差が生じる。すなわち、方位量子数 l が大きくなるほど軌道は原子核から遠くに分布するため、電子間相互作用の影響が大きくなる。したがって、多電子系の電子軌道は 1s → 2s → 2p → 3s → 3p → 4s → 3d → 4p → 5s → 4d → 5p → 6s → 4f → …… の順にエネルギーが高くなり、この順に電子が配置されてゆく(各軌道内での配置については「フントの規則」を参照)。ただし、d電子の充填などではスピン間相互作用も寄与するため、この規則に従わない場合もある。
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