御所川原
(赤~いりんご から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/04 07:30 UTC 版)
‘御所川原’ | |
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1. 果実
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属 | リンゴ属 Malus |
種 | セイヨウリンゴ M. domestica |
交配 | 不明 |
品種 | ‘御所川原’ |
開発 | ![]() |
‘御所川原’[注 1](ごしょがわら)は、青森県五所川原市のみで栽培されている、リンゴ(セイヨウリンゴ)の栽培品種の一つである。果実は小型、果肉は特に周縁部が赤くなり(図1)、酸味が多い。ジュースやジャムなどに利用されている。‘御所川原’と、これを品種親とした‘栄紅’、‘レッドキュー’はいずれも果肉が赤くなるリンゴであり、まとめて「赤~いりんご」として五所川原市の特産ブランド化されている[5]。
特徴
一般にリンゴの花は白色だが、‘御所川原’の花は紅色であり、若葉や枝も赤みを帯びている[6][7][5][8]。自家結実率が比較的高い[7]。中生種であり、収穫期は9月下旬[7][9]。
果実は小型で重さ150–200グラムほどであり、長円錐形、果柄は長い[7][9]。果皮の地色は黄色、赤色に色づく[9]。果肉の特に周縁部に、アントシアニンが蓄積して赤くなる[7]。果肉は粗で硬く、甘味もあるが、酸味が強く、渋味もある[7][9][10]。貯蔵性は比較的良い[7][9]。
起源
梅沢村(現 五所川原市梅田)村長を務めた育種家である前田顕三が、1939年(昭和14年)から20数年をかけて果肉が赤いリンゴを複数系統作出したが、種苗登録する前に亡くなった[5][11][12]。孫の前田榮司がこれを引き継ぎ、さらに青森県五所川原市が3系統を譲り受け、そのうち1つから選抜を行い、特徴が安定していることを確認し、1993年(平成5年)に種苗法に基づく品種登録を出願、1996年(平成8年)に‘御所川原’として登録された(第5077号)[11][7][10]。‘御所川原’は、五所川原市域以外で育成することは禁じられている[10]。2016年以降、苗木の育成・管理は、株式会社アグリコミュニケーションズ津軽に委託されている[10]。
利用
‘御所川原’の果実は、強い酸味があることから加工用とされ、ジュース、ワイン、ジャム、洋菓子、花茶等が商品化されている[8][13][14][15]。五所川原商工会議所では、‘御所川原’など五所川原市特産の果肉が赤いリンゴ品種を「赤~いりんご」として全国ブランド展開を図っており、中小企業庁の平成20年度「地域資源∞全国展開プロジェクト(小規模事業者新事業全国展開支援事業)」に採択された[5][16]。健康食品、化粧水などの美容関連商品、赤いシードルなどの商品化を支援している[5]。
五所川原市一ツ谷地区には、水路沿いの約1キロメートルに渡って約300本の‘御所川原’が植えられており、「赤〜いりんごの並木道」として観光名所になっている[5][13][17]。
派生品種
青森県五所川原市において、‘御所川原’を種子親、‘王林’を花粉親とした交配が行われ、実生から選抜育成されたものが‘栄紅’(えいこう)として2016年に品種登録された[11][10]。‘栄紅’の果実は大きさ150–220グラム、果肉が赤く、さっぱりした甘さと、‘王林’のような芳香がある[11]。晩生性であり、収穫期は10月下旬から11月上旬[11]。
また、同じく五所川原市において‘御所川原’を種子親、‘金星’を花粉親とした交配が行われ、実生から選抜育成されたものが‘レッドキュー’として2018年に品種登録された[11][10]。収穫期が9月上旬から中旬の早生性であり、収穫直後の特有の渋みが少ない点で‘御所川原’と異なる[11]。
脚注
注釈
出典
- ^ Brickell, C.D. et al. (2016). “International Code of Nomenclature for Cultivated Plants (9th ed.)”. Scripta Horticulturae. 18. International Society of Horticultural Science. ISBN 978-94-6261-116-0
- ^ “リンゴ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年1月4日閲覧。
- ^ 金浜耕基, ed (2015). 果樹園芸学. 文永堂出版. ISBN 978-4830041297
- ^ 小松宏光, 臼田彰, 羽生田忠敬, 小池洋男, 山下裕之 & 宮沢孝幸 (1998). “リンゴ新品種‘シナノスイート’について”. 長野県果樹試験場報告 5: 9-15 .
- ^ a b c d e f “青森地域からの便り(令和3年度)”. 東北農政局. 2024年12月20日閲覧。
- ^ JAごしょがわら市 (現:JAごしょつがる)(2009年3月6日閲覧)
- ^ a b c d e f g h “御所川原”. 登録品種データベース. 農林水産省. 2024年12月14日閲覧。
- ^ a b “赤~いりんご 御所川原”. 五所川原市観光協会. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e “御所川原(ごしょがわら)”. りんご大学. 2024年12月14日閲覧。
- ^ a b c d e f “御所川原(ごしょがわら)”. 旬の食材百科事典. 2024年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g “赤~いりんご”. 株式会社アグリコミュニケーションズ津軽. 2024年12月21日閲覧。
- ^ YOMIURI ONLINE 旅ゅーん(2024年12月20日閲覧)
- ^ a b “りんごの花びらまで赤く染まる「赤~いりんごの並木道」”. まるごと青森. 青森県 (2013年3月20日). 2024年12月14日閲覧。
- ^ “五所川原特産の美容に良いりんごを思いっきり味わう旅に出よう!”. JR東日本. 2024年12月14日閲覧。
- ^ “五所川原地域ブランド”. 五所川原市. 2024年12月14日閲覧。
- ^ 「地域資源∞全国展開プロジェクト」平成20年度採択案件一覧表(商工会議所分)(2009年3月6日閲覧)
- ^ “赤~いりんご 花も赤~く/五所川原”. 陸奥新報. (2020年5月9日)
外部リンク
- “御所川原”. 登録品種データベース. 農林水産省. 2024年12月14日閲覧。
- “御所川原(ごしょがわら)”. りんご大学. 2024年12月14日閲覧。
- “赤~いりんご 御所川原”. 五所川原市観光協会. 2024年12月21日閲覧。
- “赤~いりんご”. 株式会社アグリコミュニケーションズ津軽. 2024年12月21日閲覧。
- “青森県五所川原市 特産の「赤〜いりんご」収穫始まる”. NHK. (2024年9月13日)
赤いりんご
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/12 04:06 UTC 版)

『赤いりんご』(あかいりんご、フランス語: Pomme d'Api )は、(『紅いりんご』や『ポム・ダピ』、『りんご娘』、『かわいいりんご』とも表記される)ジャック・オッフェンバックが作曲した1幕のオペレッタで、1873年 9月4日に パリのルネサンス座にて初演された[1]。
概要


オッフェンバックが得意とした1幕構成のオペレッタで、 リブレットはリュドヴィク・アレヴィとウィリアム・ビュシュナックがフランス語で作成した。オッフェンバックは享楽のフランス第二帝政 においては追い風を受けていたが、普仏戦争敗戦後の第三共和政の下では一転して逆風を受けていた。クラカウアーによれば、オッフェンバックは大作を幾つもヒットさせた後でもなお、「一連の1幕物を書き続けていたが、その発端となったのが本作であった。それによってオッフェンバックが、時代から退いたにもかかわらず、以前と同じく創造力豊かであったことが見紛いようもなく明白になった」と言うことである[2]。永竹由幸は本作は「これほどロマンティックで美しいオペレッタがあるだろうか。話は簡単で単純そのものだが、無理に別れさせられた若い男女の気持ちの表現には、まさに絶妙なものがある」と評している[1]。森佳子は本作について「『赤いりんご』にはそれまでの作品とは異なり、刺激的な風刺ははいっていない。どちらかと言えば、18世紀末のオペラ・コミックに回帰したようなセンチメンタルな作品で、-中略-8つの音楽ナンバーはどれも素晴らしい」と評している[3]。『市場の婦人がた』(1859年)、『シュフルリ氏はご在宅』(Monsieur Choufleuri Restera Chez Lui Le...、1861年)などと2本立て(ダブルビル)または3本立て(トリプルビル)で上演されることが多い。日本初演は2007年 11月28日にモーツァルト劇場によって浜離宮朝日ホールにて行われた[4][5]。
登場人物

人物名 | 声域 | 原語 | 役 | 初演時のキャスト 1873年9月4日 指揮:オッフェンバック |
---|---|---|---|---|
カトリーヌ | ソプラノ | Catherine | ポム・ダピ と呼ばれる娘 |
ルイーズ・テオ |
ラバスタンス | バリトン | Rabastens | 初老の独身者 | ドブレ |
ギュスターヴ | ソプラノ テノール |
Gustave | ラバスタンの甥 | アンナ・ダルトー |
ギュスターヴ役はソプラノ(ズボン役)かテノールによって歌われる。テノールにとっては最高音三点ド(ハイC)が要求される難役。
上演時間
約45分
あらすじ
時と場所:19世紀のパリ
全1幕
ラバスタンスの家の居間

ラバスタンスは雇っていた家政婦と大喧嘩をやらかし、解雇してしまう。彼は職業紹介所に赴いて新しい家政婦の募集をかける手配を済ませてきたところなのだ。そこで、〈クプレ〉「斡旋屋は俺に尋ねた」(L’employé m’a dit)を歌い、若くてきれいで、給料が高くない女性を依頼してきたことを語る。彼はどんなに可愛い娘が来てくれるか、心待ちにしている。すると、甥のギュスターヴが泣き叫びながら訪れる。
ギュスターヴは叔父からの仕送りを止められたので、同棲していた恋人と別れることを余儀なくされて戻ってきたのだった。そして、〈クプレ〉「叔父さん、怒らないで下さい」(Mon oncle, ne vous fâchez pas)と歌う。ギュスターヴは別れた娘に相変わらず未練たらたらである。ラバスタンスは経験から言って、男女の良い関係はせいぜい3ヶ月しかもたないと説得する。そうこうしていると、カトリーヌが新しく紹介された家政婦ですと言って家に入って来る。

ラバスタンスは条件も合うし、可愛いので一目で気に入ってしまう。二階から泣き声が漏れ聞こえて来るので、カトリーヌが何事かと問う。ラバスタンスは甥を恋人と別れさせたので泣きわめいているのだと説明する。カトリーヌが食事の準備をしていると、ギュスターヴが台所にやって来て、カトリーヌを見て驚く。カトリーヌはギュスターヴの恋人だったのだ。ラバスタンスが買い物に出かけている隙に、ギュスターヴはカトリーヌにどうしてここにいるのかと問う。カトリーヌは今は職業紹介所から仕事をもらって働いているだけ、私たちのことはもう過去の話と冷たく語る。ギュスターヴは自分の気持ちは前と全然変わらない、相変わらず愛していると言い、静かに歌い始め、〈2重唱〉「それは日曜日の朝のことだった」(C’est un dimanche, un matin)となる。もう一度やり直そうと言うギュスターヴをカトリーヌは拒絶する。

ラバスタンスは買い物から帰るとカトリーヌに前のあなたの雇用主からの人物証明書を見せてもらっていなかったねと言う。カトリーヌは自分はこれまで働いた経験が無い、2年間恋をして同棲していたのだのだと言う。ラバスタンスはカトリーヌを食事に同席させて、身の上話の続きを聞こうとする。ラバスタンスがカトリーヌに今後はどうするつもりかと問う。 カトリーヌは以前の恋人を忘れるために新しい恋人を作りたいと〈ロンド〉「1人、2人、3人、4人、5人と男を作ります」(J’en prendrai un, deux, trois, quatr’, cinq)と歌い出す。兵隊でも、議員でも、公証人でも、農民でも、文学者でも、バリトンでも、テノールでも私を愛してくれる男をなら何でもいいと話す。 ラバスタンスは感動し、それは素晴らしい、ではまず私からどうぞと言ってキスをする。すると、ギュスターヴが割って入り、そんな破廉恥なことはダメだと怒り出す。2人は何の権利があってそんなことが言えるんだと言う。ギュスターヴは適切な反論ができずに、泣きながら家を出て行く準備をし始める。カトリーヌはギュスターヴがまだ自分を愛していることを悟って内心では喜ぶ。2人になると、ラバスタンスはカトリーヌにプロポーズする。カトリーヌはギュスターヴの意見も聞きたいと言い、家を出て行こうとするギュスターヴに相談をする。ギュスターヴは静かに〈ロマンス〉「君の心に訊いてごらん」(Consultez votre cœur,)と歌い出す。カトリーヌは自分の本当の気持ちを偽ることは出来ず、ギュスターヴへの愛情が爆発し、彼に抱きつくと熱烈にキスをする。驚愕するラバスタンスに実はカトリーヌは自分の別れた恋人だとギュスターヴが説明する。ラバスタンスは一旦は怒り出すが、こんなに良い娘なら仕方ない、結婚するなら仕送りを増やしてやろうとなる。カトリーヌは私を捨てたら「1人、2人、3人、4人、5人と男を作ります」と歌ってハッピーエンドとなる。
主な録音
年 | 配役 カトリーヌ ギュスターヴ ラバスタンス |
指揮者 管弦楽団 合唱団 |
レーベル |
---|---|---|---|
1982 | マディ・メスプレ レオナルド・ペッツィーノ ジャン=フィリップ・ラフォン |
マニュエル・ロザンタール モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 ジャン・ラフォルジュ合唱アンサンブル |
CD: EMI ASIN: B000VKW6IS |
2018 | マガリ・レジェ フロリアン・ラコニ マルク・バロー |
ミヒャエル・アレクサンダー・ヴィレンズ ケルン・アカデミー |
CD: CPO ASIN: B081WPWMLQ |
脚注
- ^ a b 『オペレッタ名曲百科』P261
- ^ 『天国と地獄―ジャック・オッフェンバックと同世代のパリ』P282
- ^ 『オペレッタの幕開け』P113
- ^ 外国オペラ作品322の日本初演記録
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所オペラ情報センター
参考文献
- 『オペレッタ名曲百科』永竹由幸 (著)、音楽之友社 (ISBN 978-4276003132)
- 『オペレッタ』 (文庫クセジュ 649) ジョゼ・ブリュイール(著) 、窪川英水(翻訳)、 大江真理(翻訳)、白水社(ISBN 978-4560056493)
- 『天国と地獄―ジャック・オッフェンバックと同世代のパリ』ジークフリート・クラカウアー著、筑摩書房(ISBN 978-4480082275)
- 『オペレッタの幕開け』―オッフェンバックと日本近代― 森佳子 (著)、青弓社、(ISBN 978-4787273970)
- 『オッフェンバック―音楽における笑い』ダヴィット・リッサン著、音楽之友社、(ISBN 978-4276224605)
外部リンク
- 赤いりんごの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- リブレット
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