診断基準の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/25 16:09 UTC 版)
現在の診断基準は慢性的な睡眠不足である多くの健常者が診断を受けているという指摘がある。 成人の適性睡眠時間は7-9時間であれば正常と定義されている。 適正睡眠時間は個人により異なり、毎日8時間睡眠を取り続けることで健常者の約4人に1人、毎日7時間睡眠で健常者の約4人に3人がこの疾患で定義されている眠気や自律神経失調症他の併発症状を呈する。 この疾患で定義されている重度の日中の眠気、数ヶ月間続く10時間以上の睡眠時間は睡眠負債による症状と同一であり、また頭痛、起立性低血圧、めまい、末梢循環障害、体温調節異常などの自律神経失調症や睡眠酩酊、起床困難等の併発症状も睡眠不足と同一症状である。また現在採用されている精密検査の基準、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG) と反復睡眠潜時検査(MSLT)では健常者の一般人口も約4人に1人が陽性を示す。しかし、健常者の一般人口の約4人に1人が特発性過眠症を患っているわけではない。 現在特発性過眠症研究機関により「医療関係者にまで勘違いを受けている、今最も過剰診断をされている睡眠障害である」と発表されている。 この疾患のMSLTの診断基準が陽性の被験者に対し「長期に渡り毎日10時間以上の十分な睡眠時間を取ること」のみで日中の眠気が解消され反復睡眠時検査の検査結果は陰性となるという研究発表が数多く存在する。しかし、この件に反説を唱えた研究発表は一つも存在していない。 数年以上の長期に渡り毎日11時間以上の睡眠時間で日中に眠気が残る場合のみ、この疾患の定義に合致すると考えられる。 しかし、ここで定義される長期間の毎日の平均睡眠時間というのは数週間や数ヶ月のことではない。 慢性的な睡眠不足状態では健常者でも11時間以上の長時間の睡眠時間を必要とするので臨床現場での判定が不可能となる。普段の睡眠時間が毎日8時間睡眠以下の健常者は睡眠負債が溜まり、数週間毎日14時間眠り続け、特発性過眠症に合致する症状を呈する。「毎日14時間寝ても眠い」という主訴の患者の多くは、普段8時間以下の睡眠時間で暮らしている慢性睡眠不足の患者が睡眠負債の返済をしている状態である。従って、数週間の睡眠時間のモニタリングで11時間以上の睡眠時間を取っているという現在の診断基準は無意味なものである。 次回の診断基準の改定において長期間の睡眠時間をモニタリングすることの必要性が議論されている。 睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)の特発性過眠症の診断基準改定に関する公式会議において現在の診断基準反復睡眠潜時検査(MSLT)は健常者の睡眠不足の重症度判定のみに有効である検査であると発表されている。また同会議において現在の特発性過眠症の診断基準は廃止されることが発表されている。 同様に、特発性過眠症専門国際学会からも現在の診断基準の廃止に関する発表がある。 また、同団体より現行の診断基準は、この疾患を正確に定義する診断制度を定める事ができなかったことによる暫定的な措置であった事が発表されている。 従って、現在の診断制度では大学病院や専門病院で診断を受けている場合であってもこの診断名自体があまり意味をなさなく、睡眠専門医もこの疾患の精密検査の結果を意味のなさないものとみなしている傾向にある。
※この「診断基準の問題点」の解説は、「特発性過眠症」の解説の一部です。
「診断基準の問題点」を含む「特発性過眠症」の記事については、「特発性過眠症」の概要を参照ください。
- 診断基準の問題点のページへのリンク