言語学から見た終止形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 10:22 UTC 版)
「終止形 (文法)」の記事における「言語学から見た終止形」の解説
語形変化(屈折)のある語において不変化の部分は語幹と呼ばれ、それに付加されることで語形に変化をもたらし、文法的機能を担う部分を語尾と呼ぶ。形態論により日本語の語形を音素レベルまで分析すると、動詞は子音語幹動詞と母音語幹動詞に分けられる。子音語幹動詞は四段動詞・ラ変動詞・ナ変動詞のことをいい、nom-u、nom-e、nom-oo、noN-da、nom-eba…のように変化しない語幹部分は子音で終わっている。一方、母音語幹動詞は一段動詞・二段動詞である。ただし、現代口語においては母音交替は起こらず語幹は一定であるが(tabe-ru、tabe-ro/jo、tabe-joo、tabe-ta、tabe-reba…)、文語においては語幹母音は母音交替を起こして2通りの語形をもっている(tabu-0、tabu-ru、tabe-jo、tabe-mu、tabe-tar-i、tabu-reba…)。なおいわゆるサ変動詞・カ変動詞は不規則な変化をする不規則動詞である。 このように見る時、終止形を表す-uや-iといった語尾は、文を子音で終わらせず、日本語の開音節構造を守る役割を果たしている。子音語幹動詞は-uを挿入させているが、「あり」のみ不規則で-iが挿入されている。一方、母音語幹動詞では母音語幹を/u/に母音交換させて子音語幹動詞との関連性を保っている。ただし、「着る」や「蹴る」などは語幹がki、keと1音節でしかないため、その語幹は変化させないまま-ruが増加させられている。また形容詞においては-iが挿入されるが語幹のkがsに交換され、またそのことによってkの前の音節がsiの音節である場合、同じ音節が重なるのを避けて1つに省略される。形容動詞の場合、語幹と語尾との間に-ar-(あり)が入っているので、子音語幹動詞「あり」に準拠して「~なり」となる。なお語尾の「と」などの前でもこの語形になるが、これは「と」が引用を表すためである。 一方、「べし」「めり」「らむ」「らし」「なり(伝聞)」などの前でウ段音になるのは、子音語幹が子音で始まる語尾と結合する際に子音が連続するのを避けるために-u-の音を母音挿入したためである。例えば、「紅葉乱れて流るめり」のような「流るめり」であればnagaru-mer-iとなるが、「書くめり」であれば、kak-u-mer-iというように-u-が挿入される。この場合は「あり」も文の終止とは異なり、ウ段音「ある」で「あるめり(ar-u-mer-i)」のようになる。ただし、-u-が挿入されずにrが鼻音子音と同化し、「あんめり(am-meri)」のようになることも多い。表記としては「あめり」「あなり」のように「ん」が書かれないことも多かった。 また形容詞・形容動詞はカリ活用やナリ活用によって「~かるべし」「~なるめり」と活用するが、これは語幹と語尾との間に-ar-(あり)が入ったことによる。「あり」は単体では存在を表す語であるが、語尾として使われると指定・措定の文法機能を果たしている。よって子音語幹動詞「あり」と同じような活用をするが、ここでも「多かめり」といったようにrが後続鼻音に同化する現象が見られる。
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