蔵書検索システムの不具合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/20 06:53 UTC 版)
「岡崎市立中央図書館事件」の記事における「蔵書検索システムの不具合」の解説
2005年に導入された図書館の新着図書情報を自動取得可能なプログラムを含んだ三菱電機インフォメーションシステムズ (MDIS) 製のソフトウェアは、1時間に400以上リクエストを送られると他のリクエストの処理が不可能になる不具合を含んでいたため、2010年7月にソフトウェアを大量のリクエストに対応できるよう改修した。なお、2006年の段階でMDISでは新版のソフトウェアを作成し、この不具合を解消していたが、同図書館の蔵書検索サイトは旧版のソフトウェアを利用し続けていた。また旧版のソフトウェアにこのような不具合が存在することはMDISから図書館側には伝えられていなかった。アクセス障害が問題となった直後の2010年3月には、MDISは問題を解析し蔵書検索ソフトウェアの不具合が原因であること、同じソフトウェアを導入した他の図書館でも同様の障害が発生していたことを把握していたが、これらの事実を同図書館側に伝えていなかった。 なお、MDISによって同図書館に納品された問題のソフトウェアは、事件前後の時期にはrobots.txtでの指定により全てのクローラを拒否する設定になっていた。これは「一般的なクローラが来ただけで閲覧しづらくなってしまう欠陥」への対策と推測されているが、結果的に国立国会図書館のクローラも受け入れを拒否しており違法状態となっていた。高木浩光研究員は、同じソフトウェアを使用している別の図書館のシステムについて調査し、国立国会図書館のクローラがアクセスすると散発的につながらない状態がしばしば発生するだろうと指摘している。全国図書館の横断検索サービスを提供しているカーリルは、同社の使用している技術は逮捕者のものと基本的に同様であり、システムの問題を発端とした逮捕は遺憾であると表明した。その上で図書館およびシステム開発者と協議し、今後このような事件が起こらないようにしたいと述べた。カーリルは事件直後に岡崎市の図書館に問い合わせをしており、そのときの回答は「カーリルは会社なので問題ありません」というものだったという。図書館情報学を専門とする河島茂生は、システムを業者に任せっきりにしてしまう危険性を明らかにした事件だとし、システム構築はしないまでも想定されるトラブルを業者に問い合わせておくことが、図書館にも求められるとしている。 蔵書検索システムの不具合や男性の逮捕に対し、同図書館の館長を務める大羽良は、「図書館には非がなく、男性のプログラムの方法がまずい」、「(男性の自作プログラムに)違法性がないことは知っていたが、図書館に了解を求めることなく、繰り返しアクセスしたことが問題だ」、「図書館側のソフトに不具合はなく、図書館側に責任はない」と語ったと新聞各紙は報じている。なお本件を調査報道した朝日新聞記者のMDISへの取材には同館長も同席したことがあり、また記者から同館長には繰り返し問題の所在について説明されていた。
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