艦隊の戦術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 20:25 UTC 版)
「蒸気船時代の海戦戦術」の記事における「艦隊の戦術」の解説
砲塔に搭載された長距離砲の開発は海戦戦術の性格を変えた。「集中」ということが戦術の基本命題であるが、艦砲の射程が伸び射角も広がったことで、提督達は艦艇の集中よりも火力の集中を指向するようになった。熟練した海軍士官の目標は敵の隊形の一点に特に力を集中させることにあった。 帆船時代の海戦戦術では、火器の有効射程は1,000ヤード(910 m)から1,200ヤード(1,100 m)であり、舷側の砲門から撃ち出していたために射角が狭かったので、火力の集中を実現するには多くの艦を狭い海域での接近戦に持ち込む必要があった。20世紀初めまでに艦砲の射程は7,000ヤード(6,400 m)以上となり、砲塔または回転砲座から迎角をつけて砲弾が打ち出される様になったため、距離のある敵に向けて砲弾を集中させることが可能となった。その効果を上げるには位置取りを慎重に謀ることが必要だった。 帆船時代の艦隊は、それぞれの艦が舷側から攻撃できるように縦陣とする必要があった。蒸気推進艦の操艦実験や、日露戦争で得られた経験からは、この陣形には新たな変更は加えられなかった。以前と同じように、すべての砲は同じ方向を指向する必要があるとされ、また、その射界を得るための物理的な必要性から、艦はすべて前後に連なるように隊形が組まれた。これによって僚艦を誤って砲撃することなく広範囲の敵を砲撃でき、また、敵を一方の側に捉えながら航行することにより、艦首と艦尾の砲塔からの斉射も可能となって、命中率を最大とすることができた。 追撃戦であるとか、まだ視認できていない敵艦を索敵したりしている場合、艦隊は横陣を組むこともあった。追撃している艦隊は敵船が落射する魚雷を受けてしまうリスクがあるが、横陣であれば、全艦の砲を敵艦隊の最後尾の艦に向けて発射できるからである。敵が交戦する用意があり、その攻撃力を最大にするために舷側を向けるような場合は、味方も同じような隊形に組まねばならない。すなわち単縦陣には単縦陣ということになる。単縦陣に組んだそれぞれの艦艇が敵の単縦陣の対応する位置の艦を相手にした。
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