脱穀速度の維持
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/10 19:25 UTC 版)
「コンバインハーベスター」の記事における「脱穀速度の維持」の解説
コンバインでよく使用される技術として、他に無段変速機があげられる。これは、一定のエンジン回転数と脱穀機回転数を維持しながらも、コンバインの走行速度を自在に変化させることを可能にする。 普通、脱穀機はある回転数で最良に作動するように調節されているので、脱穀機の回転数は一定に保つことが望ましい。また、脱穀機が処理する穀物の流量が多すぎても少なすぎても穀粒のロスが発生してしまう。それを防ぐためには刈取速度を適切に制御する必要がある。 初期の自走コンバインは、走行速度を一定のギア比で変速する手動変速機だった。 やがてこの欠点は見直され、1950年代初期のコンバインではジョンディアがバリアブルスピードドライブ(Variable Speed Drive)と呼ばれるものを装備していた。これは単にバネと油圧で制御された、幅が可変するプーリーだった。この可変プーリーは変速機の入力軸に付けられた。この駆動方式には4段変速の手動変速機がまだ使用された。オペレータは普通、3速のギヤを選択する。 オペレータがバリアブルスピードドライブシステムの範囲内で機械を加速したり減速したりするために、別な操作が追加された。変速機の入力軸上の可変プーリーの幅を減少させることによって、ベルトはプーリーの溝のより外周に移動する。これは、変速機の入力軸の回転数を遅くし、それにより、そのギヤでの走行速度を遅くした。クラッチはオペレータが機械を止めたり、変速機のギヤを変えるために、まだ残されていた。 その後、油圧技術が向上するにつれ、新しいタイプの駆動方式が発明された。この駆動方式は以前のように4段の手動変速機も備えているが、この発明では、変速機の入力軸を駆動するために油圧ポンプと油圧モータのシステムを使用した。このシステムは静油圧式無段変速機(Hydraulic Static Transmission)HSTと呼ばれる。エンジンは最高4000psi(約27.6MPa、約280kgf/cm2)を発生させる油圧ポンプを回転させる。その後、この油圧は、変速機の入力軸に接続される油圧モータに送られる。オペレータが、油圧ポンプで発生した油圧によって作動する油圧モータの回転をコントロールするため、キャビンの中に操作レバーが取り付けられている。油圧モータの中の斜板の調節によって、そのピストンのストローク量は連続的に変化させられる。 斜板が中立にセットされる場合、ピストンはシリンダの中でストロークせず油圧モータの回転が規制される結果、機械は走行せずブレーキがかかったのと同じ状態になる。レバーを操作することによって、斜板は連動するピストンを前進させ、それにより、ピストンがシリンダの中でストロークし、モータを回転させる。これらによって、速度ゼロの停止状態から変速機のギヤで選んだ最高速度まで、無段変速の速度制御が出来る。そして、通常のクラッチは不要となりこの駆動方式から取外された。 ほとんどすべての近代的なコンバインがHSTを装備している。これは、最近一般的に使われる家庭用および業務用芝刈機の中で使われる無段変速機の、より大型の物である。実際には、芝刈機および他の機械にこの駆動方式を取り入れたのは、コンバインの駆動方式の小型化からであった。
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