脚と周辺の腹面構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:44 UTC 版)
「アースロプレウラ」の記事における「脚と周辺の腹面構造」の解説
脚(関節肢)は頑丈な円錐状で背板の肋部に覆われ、両腹側からやや後ろに向けて左右に突出する。能動的な8節の短い肢節に分かれ、関節丘に沿って先端付近まで走る筋があり、各肢節の腹面には1対の可動棘、最終肢節の先端には1本の爪がある。脚は(体の前後軸を基準にして)ほぼ前後対称だが、前側は後ろ側より表面が滑らかである。 複雑な構造をした数枚の外骨格が脚とセットに配置される。中央には丸みを帯びた三角形の腹板(sternite)、脚の付け根周辺にはそれぞれ B-plate・K-plate・豹紋板(rosette-plate)と呼ばれる板状の構造体が付属し、鱗のように前後重なっている。B-plate は膨らんだ長い三角形で、脚の付け根・K-plate・豹紋板に連結している。K-plate は幅広い楕円形で、前縁が B-plate の後縁に連結し、内縁は腹板を覆い被る。その裏側は体の腹面に密着せず、ポケットのように内壁がある。K-plate にはスポンジのような粒状構造が表面に密生し、これは文献によって内壁 もしくは外壁の構造と解釈され、腹板にも似たような表面構造が見られる。豹紋板は B-plate の前縁と脚の付け根の前上方に連結し、表面の溝がこれらをまとめた前方の関節丘を起点にして、縁に向けてYの字型に分岐し、5-6枚の小さな板に細分したように見える。これらの溝は体の内部では硬化した隆起線で、脚の筋肉の付着面であったと考えられる。これらの対になる外骨格は、文献により脚の基節(coxa、最初の肢節)もしくは腹板由来と思われ、脚の付け根を強化した構造だと考えられる。 現生の多足類は原則として脚の付け根上方に気門(spiracle、呼吸器の気管の開口)をもつが、アースロプレウラの脚の周辺にそれらしき構造は見当たらない。豹紋板の部分は一時的に気門とも考えられていたが、開口らしき構造はなく、後にすぐ誤解釈として否定されており、代わりに前述の B-plate もしくは K-plate の方が(気管とは別の機構の)呼吸器と解釈される(後述参照)。 いくつかの腹面化石標本には、解離した楕円形の構造体が保存されており、これはタマヤスデに見られるような、元々各背板の肋部腹面(本属の場合は同時に豹紋板の左右)を覆い被る側板(pleurite)であるかもしれない。 Kraus 2005 では、巨大標本 Maybach specimen の前方の三葉状背板腹面にフサヤスデらしき生殖孔(ヤスデにおいて、第2脚の付け根直後にある生殖腺の開口)があると解釈されたが、信憑性は疑わしく見受けられる。
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