前後軸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 20:28 UTC 版)
前後軸(ぜんごじく、antero-posterior axis)は動物の体制の基本となる軸で、明瞭な背腹軸のない刺胞動物にも見られ、頭部(口)から尾部(肛門)を貫いている。頭尾軸(とうびじく、cranio-caudal axis)、一次軸、吻尾軸とも呼ばれる。 前後軸の形成にはほとんどの動物でWntと呼ばれる細胞外分泌性因子(リガンド)が関わっており、尾部側でWnt、頭部側でWnt拮抗因子が発現している。例えば、脊椎動物の中枢神経系は頭尾軸に沿って前脳、中脳、後脳、脊髄に分化するが、Wnt活性が低いと前脳領域が、高いと脊髄領域が形成される。コオロギ(節足動物)やプラナリア(扁形動物)、刺胞動物でもWntリガンドが尾部側の形成に機能しており、Wntは多くの動物の前後軸決定に機能している。 それに対し、同じ節足動物でもショウジョウバエでは、初期胚において細胞膜の存在しない合胞体として発生する(表割)ため、Wntのような分泌性因子の濃度勾配ではなくビコイド (bicoid) というホメオドメインを持つ転写因子がタンパク質レベルで頭尾軸に沿って濃度勾配を形成し、形態形成が行われる。また、前後軸に沿った分節の形成にもHoxクラスター遺伝子が働いている。HoxクラスターはHox遺伝子が染色体上に並んでコードされているもので、ホメオドメインと呼ばれるDNA結合ドメインを共通に持っている。Hoxクラスターが胚発生が進むにつれ、遺伝子座の3'-側から順に前後軸に沿って分節的に発現することで前後軸に沿ったそれぞれの位置に固有な形態が形成される。Hox遺伝子群は海綿動物をのぞくほぼすべての後生動物が持っている。
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