胞子虫との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/26 06:10 UTC 版)
「アピコンプレックス門」の記事における「胞子虫との関係」の解説
アピコンプレックス門は、かつて胞子虫と呼ばれていた寄生性原虫の大部分を含んでいる。もともと胞子虫(Sporozoa Leuckart, 1879)という分類群はグレガリナ類とコクシジウム類からなるものであり、その意味では胞子虫類とアピコンプレクサ類とはほぼ同義である。これ以外に粘液胞子虫類・微胞子虫類・アセトスポラ類をも「胞子虫」として扱っていた期間が長く続いていたが、これはどちらかと言えば便宜上のもので、当時から系統の異なる生物だと考えられていたし、現在ではそれぞれ全く別の生物だと確定している。この経緯については胞子虫の項に詳しい。このような場合、分類学の一般論としては、範囲を狭めて(元に戻して)胞子虫という名を使い続けるのが妥当である。まして胞子虫という名は古典的4分類の1つとして長く親しまれたものであり、アピコンプレックス門という名称が受け入れられるまでには長い論争があった。 獣医学分野で活躍した寄生虫学者Norman D. Levineは、胞子に相当する形態を取らないため胞子虫類でないと疑われていたピロプラズマ類について、アピカルコンプレックスが認められることから胞子虫と近縁と考え、1969年にこれらをまとめてPolannulifera門とすることを提案した。これは翌年Apicomplexa門と改名され、グレガリナ類・コクシジウム類・住血胞子虫類を含む胞子虫綱と、ピロプラズマ綱の2綱が置かれていた。つまり、アピコンプレクサ類は(狭義の)胞子虫類を含みさらに拡大させた概念である。しかし1970年代前半には、ピロプラズマ類は住血胞子虫類と近縁なので独立の綱を与えるべきでなく、したがってアピコンプレクサ類は胞子虫類の同義語で不要と批判された。 ところが1976年に菌類だと考えられていた軟体動物の病原体がアピカルコンプレックスとよく似た構造を持っている事が判明する。Levineはこれにパーキンサスと名付け、アピコンプレックス門を胞子虫綱(Sporozoea、和名では種虫綱と訳し変える)とパーキンサス綱の2綱とし、これが1980年の合意体系で採用された。その後の1982年、パーキンサスの構造は渦鞭毛虫によく似ていて、アピカルコンプレックスも本当に相同か疑わしく、したがってやはりアピコンプレクサ類は胞子虫類の同義語となり不要と批判された。 しかしすでに合意体系で採用されていたこともあり、アピコンプレックス門は普及し続けた。Levineはその後もアピカルコンプレックスを重視しつづけ、1988年にはアピコンプレックス門にコノイドの有無に着目した2綱(Conoidasida, Aconoidasida)を置くようにし、これによって分類体系から「胞子虫」という名前自体を消してしまった。Levineの死後、分子系統解析によって(狭義の)胞子虫類と(少なくとも一部の)コルポデラ類とが単系統群をなす事が判明しており、アピコンプレックス門という分類群自体は概ね受容されている。一方Conoidasidaという分類群は単系統にはならないため、今後系統を反映した体系に置き換えられることになるだろう。
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