結果公表
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 02:51 UTC 版)
「全国学力・学習状況調査」の記事における「結果公表」の解説
全国学力調査では、調査の結果を指導に役立てるという目的があるため、調査内容を全公開している。生徒の復習に役立てることはできるが、調査内容を公開しているため、来年度以降、経年比較用の問題を用いることができず、学力の経年変化を正しく測定することが不可能になっている。また、前述のように評価方法に問題があるにもかかわらず、結果が直接的な人事評価・学校評価に使われることとなり問題となっている。 文部科学省は、全国学力調査の結果を都道府県単位での公表に留めているが、学校ごとの成績公表は市区町村教育委員会に委ねるとしている。しかし、公開されたデータを基に、マスコミなどによって都道府県別の順位表が制作され、誤ったメッセージが伝えられていることが問題となっている。例えば、2018年度の小学国語Aの結果では、中間層において平均が1ポイント違う(有意差がない)だけで、順位が15位程度も変動することから、順位付けの指標は全くあてにならないことが考えられる。このように統計学的に正しくない考察がなされる原因になっている。 また、学力調査の結果である平均正答数や正答率といったものは、教育委員会や学校の指導力の要因よりも、SES(Socio-economic Status:保護者の学歴や年収など)の社会的要因によるものが大きいことが報告されている。全国学力学習状況調査では、SESとの関係を調べることなく、学力の実態を考察してしまっていることも問題点として挙げられる。 結果の公表について、保護者は賛成が多いが教育委員会は反対が多く、意識の乖離がみられる。2009年1月から2月にかけて行った意見調査では、市区の教育委員会の86.7%が「学校間の序列化や過度な競争につながる」「公表しなくても指導方法の改善に役立てることができる」などの理由で公表すべきでないと回答した一方、保護者は67.3%が「学校選択の基本情報」などの理由で公表すべきだとの考えであることが明らかとなった。 一方で、結果公表を積極的に行う自治体もある。教育への関心の高まりや情報公開の流れから保護者・地域住民の求めに応じざるを得ず、大阪府枚方市では市独自の学力調査の成績公開を求める裁判があり、大阪高等裁判所は公開をするよう判決した判例がある。また秋田県では、寺田典城県知事の独自判断で、2008年12月25日付で平成19年度及び20年度の調査の市町村別正答率を市町村名を含め公表した。
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