結果無価値と行為無価値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 00:42 UTC 版)
客観的違法性論(客観主義)が主流となる中で、今度は、その内部において、違法性の実質をめぐる対立が顕在化するようになった。すなわち、違法性の実質について、法益侵害説(結果無価値論)と規範違反説(行為無価値論)の対立である(それぞれの詳細は、結果無価値、行為無価値を参照。)。 結果無価値論とは、違法性の実質を、結果無価値(Erfolgsunwert)、すなわち、行為によって惹起された結果への否定的評価であるとする見解であり、違法性の実質を法益の侵害及び危殆化と理解する法益侵害説と同視される。例えば殺人罪についてみれば、既遂の場合は人の死という結果、未遂の場合は人の死という既遂結果惹起の危険という結果を生じさせることが違法であると考える。 行為無価値論とは、違法性の実質を、行為無価値(Handlungsunwert)、すなわち、結果とは切り離された狭義の行為(Handlung)それ自体への否定的評価であると理解する見解であり、違法性の実質を行為の反規範性と理解する規範違反説と同視される。例えば殺人未遂罪についてみれば、人を殺しかねないような行為の悪性(殺意とその行為態様)が違法性を基礎づけると考える。 さらに、刑法の目的を法益保護に求めるという点では結果無価値論を受け入れつつも、それに加えて行為無価値をも考慮して違法性を理解する立場があり、これは、折衷的行為無価値論、二元的行為無価値論、または単に二元論ともいわれる。単に「行為無価値論」という場合、この二元論を指していることがほとんどである。
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