違法性論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 23:34 UTC 版)
違法性論については、大学院にて二元的行為無価値論を支持する齋藤・西原に師事し、留学先であるボン大学で一元的行為無価値論者であるアルミン・カウフマン教授に師事したにもかかわらず、結果無価値論を採用している。行為無価値論に対しては極めて批判的な態度をとる反面、一元的行為無価値論に対してはその理論的一貫性を評価している(『刑事違法論の研究』はしがき参照)。 行為無価値論者のみならず、結果無価値論者の多くも承認する主観的違法要素(目的犯における目的等)の存在も認めていない。これは、客観的違法論・結果無価値論を徹底した帰結である。 スイスの刑法学者ノルの学説にヒントを得て、いわゆる被害者の同意を優越的利益の原則で説明しうるとする。これは、自己決定の利益が法益主体の固有の意味における法益(身体等)を優越し、結果として違法性が否定されるという考えに基づくものである。この考え方からは、自殺関与が処罰される根拠は、自己決定の利益が法益主体の生命に優越するほどの価値を有していないことに求められる。 正当防衛の正当化根拠を、自己保全の利益に法確証の利益(不正な侵害に対して反撃することが、個人の法益を保護するための客観的生活秩序である法の存在を確証させることによる利益)が加算されることに求める。 緊急避難の法的性格を、可罰的違法性阻却事由(物に由来する危難を第三者に転嫁する場合、および人の適法行為に由来する危難に対し避難する場合)と正当化事由(不正な侵害を第三者に転嫁する場合)として理解する(違法性阻却内部の二元説)。この立場からは、「緊急避難に対抗する緊急避難」状況が想定しうる。 いわゆる客観的処罰条件について、法益侵害を基礎付けるために必須の違法要素と見做し、「行為の条件」として把握する。 かつては牧野英一等を援用しつつ、行為無価値論を支持していた(曽根威彦「不純性不作為犯における違法性」、早稲田大学法研論集に掲載)。
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