経験への開放性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:31 UTC 版)
全特性の中で、経験への開放性はジャンル選好に最も強い影響が見られる。一般に、経験への開放性が高い人は、クラシックやジャズやエクレクティックといった複雑で奇抜な音楽や、激しく反抗的な音楽を好む。思索的で複雑なジャンルとはクラシック、ブルース、ジャズ、フォークといった音楽で、激しく反抗的な音楽とはロック、オルタナティヴ、ヘヴィメタルといった音楽である。経験への開放性の一側面として審美眼があるため、開放性と複雑な音楽の選好に強い正の相関を認める研究者は多い。経験への開放性が高い人は知性の自己評価も高い、すなわち経験への開放性の高さが知性の自覚の強さにつながり、このことも複雑な音楽、クラシックやジャズを好む傾向を説明できる。 音楽が引き起こす感情に性格特性がどう影響するかというある研究によると、経験への開放性は、悲しげでゆったりした音楽に感情的に強く反応することを最も良く予測した。悲しげな音楽が表現する最も一般的な印象は、ノスタルジア、安らぎ、不思議であり、経験への開放性はこれら全てと正の相関があった。悲しげな音楽からは美しい経験が得られると考えられている 。また、開放的な人は多様なスタイルの音楽を好んだが、現代の人気なスタイルは好まず、開放性にも限界があることが示された。しかし、以上のように言えるのもある程度までであり、別の研究では音楽を聴いて鳥肌が立つことについて調査されている。この研究によると経験への開放性がジャンル選好を最も良く予測する一方、経験への開放性では音楽による鳥肌の予測はできない。唯一鳥肌が立つのを予測できるのは、音楽を聴く頻度と、生活の中で音楽をどれだけ重要と捉えているかである。 別の研究では、経験への開放性と音楽を聴く頻度の関連と、それが音楽選好にどう影響するかが調査された。クラシック音楽の抜粋を聴かせると、開放性が高い人は繰り返し聴くことですぐ好きでなくなる傾向があり、逆に開放性が低い人は繰り返し聴くことでより好きになる傾向があった。このことから、経験への開放性が高い人にとって音楽の目新しさが重要だということが分かる。 性格検査の前と後にクラシック音楽を聴く実験で、歌詞を見る条件と見ない条件に分けられた。結果、歌詞の有無によらずいくつかの性格特性に変化があり、最も顕著に上昇したのは経験への開放性だった。性格が音楽選好に影響するのではなく、クラシック音楽が性格の自己評価を変化させ、自身をより開放的と評価するようになった。 経験への開放性は音楽の知的、認知的利用とも正の相関があり、これは開放的な人が楽曲の複雑な構成を分析しようとすることを意味する。さらに、開放性が高いほど美しい主題の多い作品を好む。
※この「経験への開放性」の解説は、「音楽選好の心理学」の解説の一部です。
「経験への開放性」を含む「音楽選好の心理学」の記事については、「音楽選好の心理学」の概要を参照ください。
- 経験への開放性のページへのリンク