細菌について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/28 05:22 UTC 版)
細菌類については肉汁培地で希釈平板法を使うのが古典的には標準的な手法であり、例えば土壌中の細菌数を調査するにはこの方法を用いる。ところが土壌試料の懸濁液を顕微鏡で調べるなど直接に細菌細胞の計数をすると、平板法での計測数の10-100倍、あるいはそれ以上に大きい値が得られることが古くから知られてきた。これは自然状態の土壌では細菌の大部分が不活性な状態にあるためとの考え方もある。また上記のように培地の種類によって出現する種が異なるから、それによるとの判断もあり、これを『培地選択制説』という。服部(1987)はこの方法の考え方の基本をパスツールからコッホへという微生物学の系譜に見ており、『生きている細菌は栄養があれば必ず繁殖してコロニーを作る』との判断に基づくものだと述べた上で、土壌微生物学はそこから脱却する様々な考え方を発展させてきたことを紹介してる。例えばヴィノグラドフスキーは土壌細菌には人工培地上では容易に生育しない『土壌固有細菌』が多く含まれているとの説を唱えた。また土壌粒子を超音波で破砕すると細菌数が増えることから、多くの細菌が土壌粒子の表面や内部に強く吸着されていることも示された。更に培地中の栄養分濃度を通常のものより10,000倍程度に希釈することでより多くの細菌が出現することなども示されている。これらは自然界の微生物世界が複雑な構造の元にあり、また微生物の性質もきわめて多彩で栄養を与えればすぐに繁殖するというような単純なものではないこと、また従来の実験技法が機械的で単純で、また人間本意であることによると彼はまとめる。 現在では土壌中の細菌の内で平板培地上で検出できるものの割合は0.3%、海水中のそれは0.1%以下で、時には0.0001%でしかないことが知られている。また低栄養の培地では出現菌数が増えることに関しては、微生物学が病原菌の研究を基礎に発展したため、標準的に用いられてきた培地が病原体向けのものであり、例えば人体の構成成分とその濃度は自然界に普通にある状態より遙かに高いことに起因すると考えられる。現在では土壌菌検出のための非選択培地としては肉汁培地を100倍に希釈して用いるのが普通である。
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