紛争と公共事業への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 19:09 UTC 版)
「室原知幸」も参照 この蜂の巣城紛争は、これ以降の日本の公共事業の在り方に極めて大きな影響を与えた。従来は開発一辺倒で下流への利益のみを追求し地元を省みなかったが、これ以後は下流受益地のみならず水没予定地・上流域の犠牲を蒙る地域の生活保護・産業振興がより重要視されることになった。室原の起こした行政訴訟は公共事業と基本的人権の整合性を世に問い、水没住民の財産権(憲法第29条)の保護の重要性を訴えた。 このことは行政を大きく動かし、ダム完成の同年に「水源地域対策特別措置法」(略称「水特法」)が施行された。これは水源地域住民の生活安定と福祉向上を図るため、計画的な産業基盤整備を行い地域振興を図ることを目的としている。これ以降は多くのダム建設において水特法が適用され、日吉ダム(淀川水系桂川)のように一大観光地が形成されるなど、水源地域の活性化に貢献している。そのほか、河川法・特定多目的ダム法、そして土地収用法の改正も行われ、より水没地域に配慮した法整備が行われた。 一方、ダム建設が地元の合意がない限り着工されない傾向がより顕著となったため、寺内ダムのように極めて短期間で妥結される例は稀となり、河川総合開発事業の長期化が顕在化した。八ッ場ダムや川辺川ダムのように本体着工が計画発表から50年経ってもなされていない例もある。
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