筋書きと音楽構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/17 08:06 UTC 版)
ルイス・ロックウッドは本作の筋書きを次のように要約している。 話はヴォリヴィアと彼女の恋人で「ローマ貴族」のサルタゴネスを中心としている。サルタゴネスの父はポルスの怨敵である。妬み深い奴隷のマーロとローマの役人であるロメニウス率いる他の登場人物らにより策謀が開始される。ロメニウスもヴォリヴィアを愛しており、彼女のために元恋人であったセリチアを捨てている。ロメニウスはポルスとサルタゴネスをローマから追放することに成功する。ヴォリヴィアはウェスタ神殿の巫女となりロメニウスの進軍から逃れようとするが、これによってロメニウスと彼の軍勢に神殿を破壊する口実を与えてしまい -- たちまち聖なる火は消えてしまう。ポルスとサルタゴネスの再登場などのいくつかの場面があった後、ロメニウスはマーロをテヴェレ川に沈めるが、彼自身も嫉妬した元恋人のセリチアに刺されてしまう。全ての悪人が死に絶えると聖なる火は不思議と自ら再び燃えはじめてヴェスタの巫女たちは喜び、大勢の歓喜の中でヴォリヴィアはサルタゴネス、ポルスと再会する。 ベートーヴェンは最初の場面にのみ曲を付けた。この場面の描写はシカネーダーから次のように提示されていた。 劇場[舞台]は魅惑的な糸杉の庭、中央には滝が流れ出でて小川となって右へ進んでいく。左にはいくつか段を下ったところに墓がある。夜明けが木々の向こうから輝いて見える。 ロックウッドはこの場面の動きを解説している。 マーロは恋人たち、ヴォリヴィアとサルタゴネスをこっそり見張り、ポルスのもとへ急行して2人が一緒にいるのを見た、朝ではないので一晩ずっとだろうと伝える。サルタゴネスを嫌うポルスは激怒し、娘を勘当すると宣言する(中略)恋人たちが登場するとポルスとマーロは身を隠す。ここでサルタゴネスとヴォリヴィアは互いに愛を誓うが、彼女はサルタゴネスにポルスは善良な心を持っているからと請け合い、不安げに彼に父の祝福を受けて欲しいと懇願する。突如ポルスが姿を現し、サルタゴネスに対峙すると彼らのいにしえの家同士の確執を思い起こさせる。ヴォリヴィアは弁解するがポルスは譲らない。するとサルタゴネスは剣を抜き、「彼女は私のものにならぬのか」と尋ねる。ポルスが拒絶すると、サルタゴネスはすぐさま剣を自らの胸にあてがう。しかし、即座に義憤が同情へと転じたポルスは、たちまちサルタゴネスの手から剣を叩き落とし、ヴォリヴィアと共に「止めるんだ!(Halt ein!)」と歌い上げる(中略)今やポルスはあっという間に度量が大きくなり(中略)「君が彼女をこれほど愛しているのだから、私は君に彼女を授ける」と言明すると、サルタゴネスとの友情を断言する。マーロが一連の出来事に狼狽して舞台を後にすると、続いて2人の主要人物たち -- 父と2人の恋人たち --が、相互の愛を歌う喜ばしい三重唱で最初の場面は終了する。 ロックウッドの記すところでは、ベートーヴェンはこの舞台上の動きに対して4部仕立ての音楽をあてがった。 ト短調:マーロとポルスの対話 変ホ長調:ヴォリヴィアとサルタゴネスの愛の二重唱 ハ短調:「伴奏つきレチタティーヴォ風対話:サルタゴネスとポルスの対峙、2人の和解による終結」 ト長調:最終の三重唱 楽器編成は次のようになっている:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、弦五部。
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