等温過程
等温過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 07:03 UTC 版)
温度 Tex の環境にある系が、ある平衡状態から別の平衡状態へ変化する過程を考える。熱力学第二法則により、系が外部から受け取る熱 Q には上限が存在する。 Q ≤ T ex Δ S {\displaystyle Q\leq T_{\text{ex}}\Delta S} この不等式とエネルギー保存則から、系が外部に為す仕事 W にも上限が存在する。 W = Q − Δ U ≤ T ex Δ S − Δ U {\displaystyle W=Q-\Delta U\leq T_{\text{ex}}\Delta S-\Delta U} 等温条件下では変化の前後で系の温度は外界の温度と等しく T=Tex なので、ヘルムホルツエネルギーの定義から Δ F = Δ ( U − T ex S ) = Δ U − T ex Δ S {\displaystyle \Delta F=\Delta (U-T_{\text{ex}}S)=\Delta U-T_{\text{ex}}\Delta S} となり、不等式 W ≤ − Δ F {\displaystyle W\leq -\Delta F} が成り立つ。この場合の仕事 W は膨張仕事および非膨張仕事のすべてを含んでいる。 すなわち、温度 Tex の環境にある系が状態 X0 から X1 へと変化する間に外部に為す仕事 W には上限 Wmax が存在する。 W ( T ex ; X 0 → X 1 ) ≤ W max ( T ex ; X 0 , X 1 ) {\displaystyle W(T_{\text{ex}};X_{0}\to X_{1})\leq W_{\text{max}}(T_{\text{ex}};X_{0},X_{1})} この Wmax はヘルムホルツエネルギーを用いると W max ( T ex ; X 0 , X 1 ) = F ( T ex ; X 0 ) − F ( T ex ; X 1 ) {\displaystyle W_{\text{max}}(T_{\text{ex}};X_{0},X_{1})=F(T_{\text{ex}};X_{0})-F(T_{\text{ex}};X_{1})} と表され、変化の前後でのヘルムホルツエネルギーの減少量が等温条件において取り出し可能な仕事量である。 等温条件下で外部に一切の仕事を行わない場合、とくに、等温等積で非膨張仕事も行わない場合は Δ F ≤ − W = 0 {\displaystyle \Delta F\leq -W=0} となり、自発変化はヘルムホルツエネルギーが減少する方向へ進む。また熱力学的平衡条件はヘルムホルツエネルギーが極小値をとることである。
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等温過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/25 16:03 UTC 版)
光子気体の熱力学的過程の一例として、動くピストンがついたシリンダーを考える。シリンダーの壁は「黒い」、すなわち光子気体系の温度はシリンダーの温度に一致するとする。これにより、シリンダーの内部は黒体輻射による光子気体系とみなすことができる。通常の分子気体とは異なり、光子気体は外部から「入れておく」必要はない。壁の物体から光子が生じるからである。内部の体積が極めて小さくなるまでピストンを押し込むことを考えてみよう。シリンダー内部の光子気体はピストンを押し返し、ピストンは体積が大きくなる方向に動く。ここで、過程が等温準静的であるとして、ピストンには逆向きの力を掛けておき、極めてゆっくりとしか動かないものとする。このときの力は、光子気体の圧力にピストンの断面積 A を掛けたものに等しい。この過程を、系の体積が V0 になるまで一定温度で行う。ピストンの移動距離 x における力の積分が、光子気体のした仕事 W になるので、 W = − ∫ 0 x 0 P ( A d x ) {\displaystyle W=-\int _{0}^{x_{0}}P(A\mathrm {d} x)} b = 8 π 5 k 4 15 c 3 h 3 {\displaystyle b={\frac {8\pi ^{5}k^{4}}{15c^{3}h^{3}}}} P ( x ) = b T 4 3 {\displaystyle P(x)={\frac {bT^{4}}{3}}\,} W = − b T 4 A x 0 3 = b T 4 V 0 3 {\displaystyle W=-{\frac {bT^{4}Ax_{0}}{3}}={\frac {bT^{4}V_{0}}{3}}} Q = U − W = H 0 {\displaystyle Q=U-W=H_{0}\,} H0 は終状態におけるエンタルピーである。エンタルピーは、光子気体を発生させるに必要なエネルギーの量であるとみなせる。
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