第1相(変性)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 04:10 UTC 版)
第1相において、様々な酵素が働き、基質に反応性があり極性を持つ官能基を導入する。最も一般的な変性の1つは、シトクロムP450が関与するオキシダーゼ反応系が触媒する水酸化である。これらの酵素複合体の働きで、非活性な炭素に酸素原子が付加し、水酸基が導入される、もしくはO-、N-、またはS-脱アルキル化が起こる。P-450オキシダーゼの反応は下図に示されるように、シトクロームと結合した酸素の還元と高反応性オキソフェリル種の発生を経て進行する 02 + NADPH + H + + RH ⟶ NADP + + H 2 O + ROH {\displaystyle {\ce {02 + NADPH + H+ + RH -> NADP+ + H2O + ROH}}} 第1相の反応(非合成反応とも呼ばれる)には、複数のオキシダーゼが関与する酸化、還元、加水分解、環化、開環、酸素原子の付加、水酸基の脱離が含まれ、主に肝臓で行われる。これらの典型的な酸化的反応にはシトクロムP450モノオキシダーゼ(CYP)、NADPH、と酸素が関与している。フェノチアジン類、アセトアミノフェン、ステロイド類などの医薬品はこの方法で代謝される。第1相の反応による代謝物の極性が十分に高ければ、すぐに排出されるが、多くの代謝物は即座に除去されずに、続く内因性物質との結合反応により、高極性の複合体を形成した後排出される。第1相の酸化反応ではC-H結合のC-OH結合への変換が共通して起こる。この反応により、薬理的に不活性な化合物(プロドラッグ)が薬理活性を示す化合物に変化する場合がある。一方で、無毒な分子が有毒な分子に変換されることもある。胃での単純な加水分解は、通常無害であるが例外はある。例えば、第1相の代謝では、アセトニトリルはグリコニトリル (HOCH2CN)に変換されるが、即座に有毒な2種類の化合物、ホルムアルデヒドとシアン化水素に解離する。 医薬品候補化合物の第1相代謝は、酵素ではない触媒を用いて、実験室で確認することができる。この生体反応の模倣反応では、しばしば第1相代謝物を含む生成物を与える。例として、胃腸薬トリメブチンの主な代謝物、デスメチルトリメブチン(ノルトリメブチン)、は市販薬を試験管内で酸化することで効率的に得られる。N-メチル基の水酸化は、ホルムアルデヒド分子の脱離をもたらし、一方O-メチル基の酸化はそれほど起こらない。
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