第1番 ニ長調 K. 412/514 (386b)
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「ホルン協奏曲 (モーツァルト)」の記事における「第1番 ニ長調 K. 412/514 (386b)」の解説
ホルン協奏曲第1番 (モーツァルト)(英語版)を参照 以下の2つの楽章から成る。 アレグロ、ニ長調、4分の4拍子。 ロンド:アレグロ、ニ長調、8分の6拍子。 管弦楽の編成は、オーボエ2本・ファゴット2本と弦楽合奏。ただしロンド楽章は「初稿」では管楽器なし(これは後述の通り未完成のためと推測される)、「改訂稿」では、ファゴットが使われない(オーボエ2本のみ)。 緩徐楽章を持たない2楽章形式は、古典派の協奏曲としては極めて異例である。一般的な急-緩-急の3楽章形式を意図して着手されたが、中間楽章が作曲されずに終わったのだろうと考えられている。 「ロンド」の楽章には2種類の譜面が残されている。一方は曲の構成は最後まで完成しているものの、独奏パート以外の伴奏の大部分が未完成であり、初稿と呼ばれる。もう一方は伴奏を含めてすべて完成しているもので、改訂稿と呼ばれる。従来の研究では、1782年に「アレグロ」が作曲され、同時に「ロンド(初稿)」も着手されたが未完で放置され、その後1787年に全面的に書き直す形で「ロンド(改訂稿)」が完成された、と考えられてきた。最近の研究では、そもそも「アレグロ」は1791年に書かれ、「ロンド(初稿)」も同時期に書かれたとされる。「ロンド(改訂稿)」については、モーツァルトの没後の1792年に弟子のフランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤーが補筆完成させたものであると考えられている。これは現在ほぼ定説となっており、この説の普及と共に、改訂稿のロンドは「ジュスマイヤー版」と呼ばれることがある。 モーツァルトの4曲のホルン協奏曲のうち、ニ長調で書かれたのはこれが唯一である。概要で述べたように、モーツァルトがロイトゲープの技量の衰えを気遣って他の3曲より調号を下げたという見解がある。 ロンド楽章の速度記号は「アレグロ」であるが、独奏ホルンのみ「アダージョ」と記されている。通常これはモーツァルトのユーモアと解される。 ロンド(初稿)の譜面には、独奏ホルンの部分に、最初から最後までロイトゲープをからかうセリフが書かれている(モーツァルトによるものである)。楽曲の表情を実況中継したようなセリフであると指摘されることが多い。 ロンド(改訂稿、ジュースマイヤー版)の譜面には、ジュースマイヤーにより「ウィーン、聖金曜日、1792年」という日付が記されている。かつてこの改訂稿がモーツァルト自身の作曲だと考えられていた時期には、「モーツァルトがふざけて未来の(本人の死後の)日付を書いた」と解釈されていた。改訂稿の中間部では「エレミヤの哀歌」の旋律が奏でられ、ジュスマイヤーによるモーツァルトへの追悼の意の表れであるとされる。 古い時代の録音はほとんどすべて「アレグロ」と「ロンド(改訂稿)」によるものである。最近では、第2楽章として「ロンド(初稿)」の伴奏部分を補って演奏する機会も増えている。録音では初稿・改訂稿の両方を収録しているものも多い。
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