第一部 祖父たちの戦争 (The Grandfathers' War)
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「祖父たちの戦争」の記事における「第一部 祖父たちの戦争 (The Grandfathers' War)」の解説
医療船「エスクリプス20」は、3ケ月間におよぶ超光速航行を終えようとしていた。船内では医療局員のカルフーンが、今回の任務のことを改めて考えていた。惑星「ファイドラ2」と惑星「カーニス3」が、戦争をするという情報を受けて派遣されたのだが、ランディング・グリッドが設置されている惑星で戦争が起こるはずがない。惑星に接近するものは、何でもグリッドの力線で排除できるからだ。超空間からの離脱2秒前に、エスクリプス20は強制的に通常空間に引き出された。それは宇宙空間に浮かぶ、自力航行可能なグリッドの力線のためだった。ファイドラ2の連中が、カーニス太陽系を攻撃するために運んできたらしい。このグリッドがあれば、惑星グリッドの作動を打ち消せるので、宇宙からの攻撃が可能になる。エスクリプス20は、カーニス3の外側の軌道を回る惑星「カーニス4」に着陸させられた。そこの前線基地の司令官は、こう説明した。ファイドラの太陽が、新星爆発する兆候が観測された。住民の避難施設を建設するため、カーニス太陽系の第3惑星(カーニス3)に二十代の若者たちを送りこんだ。一定の施設が完成した段階で、もっと若い十代後半の連中を送り、さらに十代前半の子供たち、そして十歳以下の子供たちを預けたことを。 カーニス3の若者たちは、次々に送り込まれる子供たちの世話をしながらの建設工事に疲れ果てていた。ファイドラの太陽が、本当に新星爆発するかを独自に観測したが、その兆候はない。そこでファイドラ2の言っていることはデタラメと思い込み、これ以上の仕事を拒否していた。実はこの観測時点では、太陽活動が一時的に平穏な状態になっていたのだが…。避難施設が完成しなければ、残っている住民が新星爆発で死ぬことになるファイドラ2の、父母や祖父母たちが宣戦を布告していたのだった。エスクリプス20は、ファイドラ側から託された攻撃予告メッセージと、捕らわれていたカーニス側の捕虜1人を乗せてカーニス3へ向かった。惑星への着陸はグリッド管制官の技術も良く、なんのトラブルもなく行われた。カルフーンはカーニス3の代表へ、3日後に攻撃を開始するというファイドラからのメッセージを伝えた。そして託児所を視察して異常を感じた。幼児たちは活発に動きまわることもなく、うつろな目をしてたまに笑うだけだった。その原因は、人手不足の若者たちが、幼児の世話に時間を取られないようにするため、サイコ・サーキットを使っていたためだ。 これは子供たちの神経を互いに接続し、一人の感じたことを他の全員に伝えるものだ。そのため、一人の大人が一人の幼児と遊んでやれば、その楽しさを他の子供も味わえるため、育児にかかる労力を大幅に減らすことができる。このため、幼児たちはただ座っているだけだったのだ。そしてカルフーンは、幼児たちが衰弱して身体の抵抗力をなくしているため、ジフテリアや猩紅熱、麻疹に感染していることに気づいた。未知の病原体もいる。それなのに、ここには医者がおらず医薬品も無い。カルフーンはマーガトロイドに病原体を注射し、抗体を作った。その情報をファイドラの病院船に伝え、カーニス3に着陸して治療にあたるよう要請した。だがカーニス3の若者たちは、病院船ではなく戦闘艦が着陸するものと考えて、着陸許可を出さない。業を煮やしたカルフーンは、エスクリプス20を離陸させ、非常用ロケットでランディング・グリッドを破壊した。宇宙空間にあるファイドラのランディング・グリッドを使って病院船が着陸し、子供たちの命は救われた。
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