禅鳳の伝書
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禅鳳の著作は、1915年刊行の吉田東伍校注『禅竹集』に『毛端私珍抄』『反故裏の書』が収録されるなど、比較的早くから出版されている。しかし『禅竹集』では特に『反故裏の書』(三)に関して改変が多く、現在研究には用いられない。以下、『禅鳳書物写し』を除き表章・伊藤正義『金春古伝書集成』(わんや書店、1969年)に収めている。ほかに『禅鳳雑談』は、北川忠彦校訂で『古代中世芸術論集』(日本思想大系:岩波書店)に収めている。 『毛端私珍抄』(現存本毛端私珍抄) 『反故裏の書』(一) - (三)いずれも未完の著作。総合的伝書『毛端私珍抄』として執筆を進めていたらしく、『反故裏の書』三部がその執筆用メモであるが、現存する「毛端私珍抄」自体はその完成稿ではなく、あくまで第一稿を書き写したものらしい。相互に内容の重複が多い。 『元安本五音之次第』本来は無題の書。永正8年(1511年)8月の奥書がある。前半は世阿弥『五音曲条々』、禅竹『五音之次第』『五音十体』『五音三曲集』の所説とほぼ同内容、後半は『毛端私珍抄』などと関連する禅鳳独自の説。当時の謡の流行が窺える。嫡男氏昭に相伝。 『音曲五音』やはり本来は無題の書と思われる。二種の伝書を合写したもので、前半は永正13年(1516年)12月奥書、後半は大永8年(1528年)3月奥書。ともに奈良在住の素人弟子であったらしい新屋左衛門五郎という人物に当てて書かれたものである。 『囃之事』永正2年(1505年)、後に観世座に移籍する鼓の名人・宮増弥左衛門に相伝。書状形式で、鼓役者の心得を記す。 『禅鳳雑談』『禅鳳申楽談儀』とも。永正9年(1512年)から13年にかけての禅鳳の芸談の聞書。話題は多岐に及び、当時の猿楽の実態を知る上で貴重な史料とされる。著者は禅鳳の弟子と思われる藤右衛門という人物で、天文22年(1553年)76歳で没したらしい。 『禅鳳書物写し』無題の一枚の書付。娘婿の観世大夫道見に相伝し、禅鳳の孫である観世宗節が書写したものか。
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