祖父母の育児への関わり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/08 07:16 UTC 版)
祖父母による育児への関与は拡大する傾向にある。2007年以降、アメリカ合衆国の子どもたちのおよそ3分の1は、両親と祖父母のいずれかひとり以上とともに居住している。こうした世帯の、およそ67%は、祖父母のひとり以上によって家事が担われている。同様に、ヨーロッパの11カ国を対象とした統計によれば、祖父母の40%以上は、孫の親が不在の状況で孫の育児をしている。イギリスでは、16歳未満の孫をもつ祖父母の63%ほどが、育児に携わっている。東洋でも、祖父母の育児への関わりは一般的である。例えば、香港では、祖父母の48%が育児を行なっているとされている。中国では、45歳以上の祖父母のうち、58%ほどが育児に関わっている。シンガポールでは、0歳から3歳までの乳幼児の40%は、祖父母によって育児されており、この比率は上昇傾向にある。大韓民国では、6歳未満の子どもたちの53%が祖父母に育児されている。このように、祖父母が孫たちの育児をすることは、世界的に広まった現象となっている。 祖父母の育児への関わりが広まった背景にはいくつもの理由がある。第一に、平均余命が伸びた一方で、出生率が下がったことがある。つまり、子どもたちの成長期に、育児に参加できる祖父母が健在である例が増えたのである。加えて、出生率が下がったことで、祖父母たちは、より少ない数の孫に意識と資源を注げるようになった。第二に、かつてよりも多くの母親たちが労働力として外で働くようになっており、育児の負担を誰かが担う必要が生じていることがある。例えば、香港では、55%の祖父母たちは、孫の両親が働きにでなければならないため、孫の育児を担っているという。大韓民国では、働く母親の53%が、自分の両親に育児をしてもらっているという。 祖父母の関わり方の程度は、社会福祉政策など、社会的な文脈によっても異なってくる。例えば、スウェーデンやデンマークなどのヨーロッパ諸国においては、公的な育児支援が広く整備されており、祖父母が育児に関わる度合いは抑えられている。これとは対照的に、同じヨーロッパでもスペインやイタリアなど、公的な育児支援が限られ、福祉関係の仕事の報酬が低い国々においては、祖父母が育児に関わる度合いは大きくなる。シンガポールでは、祖父母が育児に関わることへの税負担の軽減措置が2004年に導入され、12歳以下の子どもをもつシンガポール市民の共働き世帯が、子どもの育児を雇用されていない祖父母に委ねた場合に、3,000シンガポール・ドルの税控除を受けられることになった。
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