社会性・政治性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:39 UTC 版)
社会的・政治的観点を強く持っており、大手出版社から出されたスーパーヒーロー・ジャンル作品も含めてどの作品も大なり小なりその時代の歴史的、社会的、文化的文脈を意識して書かれている。ポップカルチャー研究者コーリー・クリークマーは、ムーアの同ジャンルへの関心が一つにはもしヒーローが実在したらどんな政治的機能を果たすか?という社会的な問いだったと述べている。後進の原作者に向けて書かれた1985年のエッセイでは、コミックがファンのノスタルジーや現実逃避に奉仕するだけではグリーティング・カード業界と同じくらいの価値しかないと説き、今日性のある作品を書くことを強く勧めている。 … 人種関係や環境汚染を扱った作品のことだけを言っているわけじゃない。それも確かに重要ではあるが。私が言っているのは、我々を取り巻くこの世界にとって何かしら意味を持つ作品ということだ。20世紀が幕を閉じようとしている中に置かれた生の本質と手触りを映し出す作品、何かのために有用な作品だ。 —アラン・ムーア(On Writing for Comics、1985年) そして、人生に必ず政治的な要素が関わるように、芸術が生と関わろうとする限りそこに必ず政治的な観点が生じるのだと言っている。 2012年の論説 "Buster Brown at the Barricades"(→バリケードの中のバスター・ブラウン)において、コミックを民衆による政治表現の伝統に連なるものとして論じている。そこでムーアは、コミックの歴史が風刺的カートゥーン(1コマ漫画)に始まったと述べ、支配者、神、制度に対する健全な懐疑主義に根差した偉大な伝統 … 真に大衆的な芸術形式であり … 正しく使われれば社会変革の道具としてこの上ない力を発揮することできると書いた。その本来の姿が、1930年代に成立したコミックブック出版によってエンターテインメント産業の一部品に堕したというのがムーアの主張だった。 ムーアの作品は概して作者のアナキスト的、左派リバタリアン的価値観を反映しており、自身の言うコミックの伝統を受け継いでいるといえる。ただしそれは特定の思想や政治的見解を広めるものではなく、あいまいで矛盾をはらんだ領域に関心が向かっている。ムーア自身、代表作『ウォッチメン』のテーマでもっとも興味深いのはこの世界が多くのエゴ、欲求や欲望、偶然で無原則な出来事の絡み合いからなるという世界観であり、それが一つの政治的声明だと述べている。
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