真の貴ガス化合物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/21 03:56 UTC 版)
1962年に、ニール・バートレットは強い酸化剤である六フッ化白金 PtF6 が酸素分子 O2 をジオキシゲニル O2+ へ酸化することを見出した。O2 のイオン化に必要なエネルギー (1165 kJ mol–1) はキセノン Xe を陽イオン Xe+ へ酸化するために必要なエネルギー (1170 kJ mol–1) に近かったことから、バートレットは Xe と PtF6 との反応を試みた。すると結晶状の生成物が得られ、ヘキサフルオロ白金酸キセノン Xe+[PtF6]- と推定された。これが貴ガス元素と他の元素との「真の」化合物の最初の例とされる。 1962年の後半に、Howard Claassen らはキセノンとフッ素とを高温 (400 ℃, 1 h) で作用させ、四フッ化キセノン XeF4 を合成した。これが二種類の元素のみから成る単純な貴ガス化合物の最初の例である。 近年までいくつかの貴ガス化合物が合成されてきた。中でもキセノン化合物はフッ化物(二フッ化キセノン XeF2 市販品が入手可能、四フッ化キセノン XeF4、六フッ化キセノン XeF6)、オキシフッ化物(オキシ二フッ化キセノン XeOF2、オキシ四フッ化キセノン XeOF4、ジオキシ二フッ化キセノン XeO2F2、トリオキシ二フッ化キセノン XeO3F2、ジオキシ四フッ化キセノン XeO2F4)、酸化物 (三酸化キセノン XeO3、四酸化キセノン XeO4)などいくつかの種類が知られる。二フッ化キセノンはキセノンとフッ素分子の気体を太陽光にあてるだけで得られる。キセノンのフッ化物を得ようとしていた過去50年余りの間、二通りの気体を混ぜる取り組みはさまざまになされてきたが、太陽光を利用する試みはなされていなかったのである。 キセノン以外の貴ガス元素については、ラドンはフッ素と反応して二フッ化ラドン RnF2 を与える。二フッ化ラドンは固相において黄色い光を発する。クリプトンもフッ素と反応して二フッ化クリプトンを与える。アルゴンの化合物は2000年に、アルゴンとフッ化水素からアルゴンフッ素水素化物 (HArF) が生じることが極低温下において観測され初めての例となった。 近年キセノンについては、一般式が XeOxY2(x = 1, 2, 3; Y = 電子求引基 例: CF3、C(SO2CF3)3、N(SO2F)2、N(SO2CF3)2、OTeF5、O(IO2F2)、など)と表される多彩な化合物群が知られる。キセノンは酸素や窒素、炭素、金、過キセノン酸、ハロゲン化物イオン、ほか錯イオンと結合する。それらの化合物群は周期表で隣り合うヨウ素の超原子価化合物群と似る。化合物 Xe2Sb2F11 は Xe-Xe 結合を持ち、それはこれまで知られている中で最も長い結合である (308.71 pm)。 2017年にはこれまで合成されたことなかった真のヘリウム化合物であるヘリウム化二ナトリウム が超高圧下で存在することが米国、ロシア、中国、欧州の国際研究チームによる研究で判明した。また同時にヘリウム化酸化二ナトリウムが安定的に存在することが予測された。なおネオンの化合物については認められた化合物はない。
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