盲人の治癒_(エル・グレコ、ドレスデン)とは? わかりやすく解説

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盲人の治癒 (エル・グレコ、ドレスデン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/27 08:29 UTC 版)

『盲人の治癒』
スペイン語: La curación del ciego
英語: Healing of the Man Born Blind
作者エル・グレコ
製作年1567-1570年頃
寸法65.5 cm × 84 cm (25.8 in × 33 in)
所蔵アルテ・マイスター絵画館ドレスデン
エル・グレコ『盲人の治癒』(1570年頃)、メトロポリタン美術館
エル・グレコ『盲人の治癒』(1570-1575年頃)、パルマ国立美術館

盲人の治癒』(もうじんのちゆ、西: La curación del ciego: Healing of the Man Born Blind) は、ギリシャクレタ島出身であるマニエリスム期のスペインの巨匠エル・グレコが板上にテンペラで制作した『新約聖書』主題の作品である。画家は1576年の後半、スペインに渡ったが、本作は画家がヴェネツィアに滞在していた1567-1570年頃に描かれた[1][2]。同主題の作品は3点あり、本作がもっとも初期のもので、続いてメトロポリタン美術館所蔵の『盲人の治癒』、最後にパルマ国立美術館所蔵の『盲人の治癒』がローマで描かれたと思われる[1]。現在、本作はドレスデンアルテ・マイスター絵画館に所蔵されている[3]

解説

イエス・キリストが盲人の目を開くというこの奇跡の物語は『新約聖書』中の「マタイによる福音書」(20章29-34) を初め「マルコによる福音書」、「ルカによる福音書」にも記述されているが、この主題は、対抗宗教改革の時代、霊的な啓発や啓示の象徴とされた。同時代のイタリアで美術の研鑽を積んでいたエル・グレコにとって、この主題のように戸外で多くの人々が展開する場面を描くことは実験と試行錯誤の機会であったと考えられる[1]

本作は、エル・グレコが16世紀ヴェネツィア派の巨匠ティントレットティツィアーノから熱心に学び取った結果、遠近法の欠如している故郷クレタ島のビザンチン美術の様式を放棄し、線遠近法によって特徴づけられる空間を初めて用いたことを示している[2]。16世紀の建築書や古代ローマ浴場跡をモデルとした建築モティーフを背景に、左右2つの群像を描く構図は画家の3点の同主題ヴァージョンに共通である[1]が、本作は板にテンペラという技法、画面手前の段差部分に置かれた袋や犬などのヴェネツィア的なモティーフに加え、版画から引用した人物に硬さが残る点から、もっとも初期のヴェネツィア時代の制作である[1]。これに対し、パルマ国立美術館にある作品は背中を見せた半裸の人物像のポーズ、遠近法の誇張などにマニエリスム美術の影響が見られるほか、線遠近法の消失点ディオクレティアヌス帝の浴場跡を使用していることから明らかに画家のローマ時代の制作である[2]

参考文献

脚注

  1. ^ a b c d e 『もっと知りたいエル・グレコ 生涯と作品』大高保二郎、松原典子著、2012年刊行、18-19項参照 ISBN 978-4-8087-0956-3 2022年12月27日閲覧
  2. ^ a b c 『カンヴァス世界の大画家 12 エル・グレコ』、1982年刊行、77項 ISBN 4-12-401902-5 12月27日閲覧
  3. ^ アルテ・マイスター絵画館の本作のサイト (ドイツ語) [1]12月27日閲覧

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