聖母の聖ヒュアキントスへの顕現とは? わかりやすく解説

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聖母の聖ヒュアキントスへの顕現

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/16 01:26 UTC 版)

『聖母の聖ヒュアキントスへの顕現』
スペイン語: Aparición de la Virgen a san Jacinto
英語: The Apparition of the Virgin to Saint Hyacinth
作者 エル・グレコ
製作年 1605-1610年
種類 キャンバス油彩
寸法 100 cm × 61.9 cm (39 in × 24.4 in)
所蔵 メモリアル・アート・ギャラリー英語版ロチェスター (ニューヨーク州)

聖母の聖ヒュアキントスへの顕現』(せいぼのせいヒュアキントスへのけんげん、西: Aparición de la Virgen a san Jacinto: The Apparition of the Virgin to Saint Hyacinth) は、ギリシャクレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコが画業後期の1605-1610年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。聖母の被昇天の日にポーランドの聖ヒュアキントス英語版の前に現れた聖母マリアと幼子イエス・キリストの幻影を表している。この絵画は2点の同主題作のうちの1点で、米国ニューヨーク州ロチェスターにあるメモリアル・アート・ギャラリー英語版に所蔵されている[1]。もう1点のより大きなヴァージョン (158.4 × 98.7 cm) は、ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるバーンズ・コレクションに所蔵されている[2]

背景

エル・グレコ『聖母の聖ヒュアキントスへの顕現』 (1605-1610年)、158.4 × 98.7 cm、バーンズ・コレクション (フィラデルフィア)

『聖母の聖ヒュアキントスへの顕現』は、エル・グレコの1614年の死亡時の財産目録からホルヘ・マヌエル・テオトコプリ (エル・グレコの息子) への財産に移管されたことを示す1621年の目録にいたるまで一貫して記録に残されている[3]。バーンズ・コレクションの大きなヴァージョンも、メモリアル・アート・ギャラリーの小さなヴァージョンも、これらの目録に記されている。1614年の目録では「偉大な」あるいは「大きな」という言葉で2作品が区別され、1621年の目録ではサイズの違いを示す寸法を用いて、さらに詳しく説明されている[3]

スペインの作家フェルナンド・マリアス英語版は、これら2作品に関して「特別な顧客のために要請があれば (複製が) 制作されたであろう」こと、そしてトレドの (エル・グレコの) 工房で数多くの複製が来客用に入手可能であったことをはっきりと述べている[4]。2作品がエル・グレコの所有であったことは、工房に置かれたままであった可能性を示唆する。肖像画聖人の二重肖像画などほかの絵画は売却用に工房で描かれ、展示されていた。一方、幻視や顕現を描いたより複雑な主題の絵画は、顧客の指示により制作された注文作品であった[4]

メモリアル・アート・ギャラリーの作品の白い布地の部分
バーンズ・コレクションの作品の白い布地の部分

作品

メモリアル・アート・ギャラリーの作品は、バーンズ・コレクションの作品よりもずっと大まかな様式で描かれている。画面の大部分は、暗い赤みがかったオレンジ色の下地を隠そうとする意図なしに直接その上に大雑把に描かれている。この赤みがかったオレンジ色の下地の絵具は、聖ヒュアキントスの衣服に用いられた鉛白絵具などの数々の箇所に見えている。その下地を隠し、その上から色を塗り重ねる代わりに、鉛白と灰色を直接下地の上に直接塗ることで、色が下地の絵具の影響を受ける。エル・グレコは、効果を出すために下地の絵具を用いることで損失を被っていない。『ディエゴ・デ・コバルビアスの肖像』 (エル・グレコ美術館英語版トレド) において、彼は下地の絵具の上に直接鉛白を塗っており、剥き出しの下地が衣服の色調に影響を与えている。なお、この肖像画の衣服の部分は、ほかの部分と同じ下地の絵具によって塗られているわけではないことに注目する必要がある。

メモリアル・アート・ギャラリー蔵の『聖母の聖ヒュアキントスへの顕現』中の聖母子周辺の雲などの部分は、薄い色調のウルトラマリンの絵具が鉛白の上に塗られている。一方、雲の周辺、とりわけ背景の雲と壁龕の境目では、またしても下地が露わになっている。しかし、バーンズ・コレクションの作品中のこれら下地の部分には、完全に色が塗られている。さらに、『ラオコーン』 (ワシントン・ナショナル・ギャラリー) 、『慈愛の聖母』、『受胎告知』 (ともにイリェスカス英語版) など空と雲からなる作品はすべて赤みがかった下地の絵具を用いており、下地の絵具の露出は目立つ。『聖マルティヌスと乞食』(ワシントン・ナショナル・ギャラリー) もやはり下地の絵具を利用しているが、それは青みがかった銀色である。

脚注

  1. ^ MAG Collection – The Apparition of the Virgin to St. Hyacinth”. magart.rochester.edu. 2023年12月20日閲覧。
  2. ^ Barnes Collection Online — El Greco (Domenikos Theotokopoulos): Apparition of the Virgin and Child to Saint Hyacinth” (英語). Barnes Collection Online — El Greco (Domenikos Theotokopoulos): Apparition of the Virgin and Child to Saint Hyacinth. 2023年12月20日閲覧。
  3. ^ a b Marías, Fernando Edson訳 (2013) (English). El Greco, life and work, a new history.. London: Thames & Hudson. pp. 303-305. ISBN 9780500093771 
  4. ^ a b Marías, 256.

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