三位一体会士の肖像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/12 01:03 UTC 版)
スペイン語: Retrato de un monje trinitario 英語: Portrait of a Trinitarian Friar |
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作者 | エル・グレコ |
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製作年 | 1609年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 92.39 cm × 85.41 cm (36.37 in × 33.63 in) |
所蔵 | ネルソン・アトキンス美術館、カンザスシティ |
『三位一体会士の肖像』(さんみいったいかいしのしょうぞう、西: Retrato de un monje trinitario、英: Portrait of a Trinitarian Friar)は、クレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコが1609年ごろ、キャンバス上に油彩で描いた肖像画である。椅子の肘掛に小さな筆記体のギリシャ語の文字で「doménikos theotokópoulos e'poíei」という画家の署名が記されている[1]。作品は1952年にウィリアム・ロックヒル・ネルソン基金により購入されて以来[1][2]、カンザスシティのネルソン・アトキンス美術館に所蔵されている[1][2]。
作品
モデルの太った人物は革の背もたれ付きの椅子にふんぞり返るような姿勢で座っており、世俗的な野心を露わにしている。彼は服装、特に赤と青の十字架文様から三位一体会士であることがわかるが、名前は判明していない[2]。

エル・グレコは、人物の頭巾とマント、眼鏡入れ、椅子、そして無地の背景を濃淡の差こそあれ、黒または濃い褐色で統一している。そのため、修道士の白い服を際立たせ、彼の特徴ある容貌に鑑賞者の注意を集中させる[2]。作品は補筆が著しく、手の描写などはまったく不自然であるものの、顔の表情は適確な筆致により実に生き生きと捉えられている[2]。制作年代はどの研究者も1604-1614年としており、技法から見て1605-1610年ごろとするのが妥当であろう[2]。
エル・グレコは、1609年またはその少し前に、当時、雄弁家、詩人として名声を馳せた三位一体会の『修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像』 (ボストン美術館) を制作している。その肖像画でも、モデルは三位一体会の修道服を纏って革の背もたれの椅子に座り、背景は暗い無地であるなど本作との共通点が多く見られる。これら2作の制作には、何らかの関連があったものと考えられる[2]。
脚注
- ^ a b c “Portrait of a Trinitarian Friar”. ネルソン・アトキンス美術館公式サイト (英語). 2025年8月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『エル・グレコ展』、1986年、205-206頁。
参考文献
外部リンク
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