聖母子を幻視する聖ラウレンティウスとは? わかりやすく解説

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聖母子を幻視する聖ラウレンティウス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/23 13:48 UTC 版)

 

『聖母子を幻視する聖ラウレンティウス』
スペイン語: Aparición de la Virgen a san Lorenzo
英語: Saint Lawrence's Vision of the Madonna and Child
作者 エル・グレコ
製作年 1577年
種類 キャンバス上に油彩
寸法 119 cm × 102 cm (47 in × 40 in)
所蔵 コレヒオ・デ・カルデナル、モンフォルテ・デ・レモス

聖母子を幻視する聖ラウレンティウス』(せいぼしをげんしするせいラウレンティウス、: Saint Lawrence's Vision of the Madonna and Child)、または『聖母の聖ラウレンティウスへの顕現』(せいぼのせいラウレンティウスへのけんげん、西: Aparición de la Virgen a san Lorenzo)は、クレタ島出身のマニエリスム期のスペインの巨匠エル・グレコが1577年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。 異端審問官、セビーリャ大司教英語版クエンカ司教英語版サモラ司教英語版であったロドリゴ・デ・カストロ英語版に委嘱された。当時、エル・グレコが個人的に委嘱された数少ない作品のうちの1点である。現在、モンフォルテ・デ・レモスにあるコレヒオ・デ・カルデナル (Colegio del Cardenal) に所蔵されている[1]

主題

ローマのラウレンティウススペイン北東部のウエスカに生まれ、サラゴーサで学んでいた時にローマ教皇シクストゥス2世からローマに招聘された。彼はローマの教会の助祭長に任ぜられ、教会の全財産を託された[1][2]キリスト教徒ローマ皇帝ピリップス・アラブスが部下のデキウスに殺され、デキウスが皇帝の座に就くと、シクストゥスも捕らえられ、死刑を宣告された。ラウレンティウスは死をともにすることを願ったが、3日の間に教会の富を貧民に分配するようシクストゥスに命じられ、それに従った[1]。デキウスから教会の資産を差し出すよう求められた際、彼は連れてきた信者たちを示し、これが教会の財産であると述べる[2]。激怒したデキウスは、ラウレンティウスを燃え盛る炎にあぶって処刑した。伝承によれば、その場に立ち会ったデキウスに対して、彼は「こちら側は焼けたから、裏返して焼け」といったという[1][2]。ラウレンティウスのアトリビュート (人物を特定する事物) は助祭服と拷問道具の焼き網である[2]。なお、ラウレンティウスとは「月桂樹をいただく人」を意味し、彼が恐ろしい拷問に打ち勝ったことを称賛する呼び名である[1]

作品

本作の構図は、エル・グレコがイタリア時代に受けたミケランジェロティツィアーノの影響を示している。作品は助祭としてのラウレンティウスを表しているが、低い視点から捉えられた人体表現は、パレンシア大聖堂英語版の『聖セバスティアヌス』など画家がイタリアからスペインに到着直後に制作された一連の作品と共通している[1]。また、聖母子を見上げるラウレンティウスの姿勢は左右逆転しているとはいえ、ウースター美術館英語版蔵の『悔悛するマグダラのマリア』と大きな違いはない[1]

本作の色彩はヴェネツィア派の影響を残した暖かみのある自然なもので、後のエル・グレコの作品に見られるような冷たく観念的なものではない。そして、特に注目すべきは、金と赤の刺繍のあるブロケードダルマティカである[1]。エル・グレコは添景の草花や花瓶などには画面のほかの部分とは無関係に驚くほど精緻な描写を見せるが、本作のダルマティカではそれが極端なまでに示されている。このような豪華な衣服の表現は、後の『オルガス伯の埋葬』(サント・トメ教会英語版、トレド) などへと発展する[1]

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i 『エル・グレコ展』、1986年、180-181頁。
  2. ^ a b c d 「聖書」と「神話」の象徴図鑑 2011年、154頁。

参考文献

外部リンク




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