キリストの降誕 (エル・グレコ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/26 17:58 UTC 版)
スペイン語: La Natividad 英語: Nativity |
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作者 | エル・グレコ |
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製作年 | 1603-1605年 |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 128 cm × 128 cm (50 in × 50 in) |
所蔵 | カリダー施療院、イリェスカス |
『キリストの降誕』(きりすとのこうたん、西: La Natividad、英: Nativity)は、クレタ島出身のマニエリスム期スペインの巨匠エル・グレコが1603–1605年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。イリェカスにあるカリダー施療院 (Santuario de Nuestra Señora de la Caridad) 附属礼拝堂の高祭壇のために制作された5点の作品群のうちの1点で[1][2][3]、それらの絵画はみな聖母マリアの栄光を讃えるものであった[1]。本作とその他の3点 (『慈愛の聖母』、『受胎告知』、『聖母戴冠』) は現在もカリダー施療院に掛けられているが、もう1点の『聖母の結婚』はブカレストにあるルーマニア国立美術館に所蔵されている[1]。
作品

エル・グレコは、1603年の夏から1605年の夏までの約2年間[1][2]にカリダー施療院の高祭壇のために上記の5点の絵画を制作した[1]。今世紀初頭に施療院附属礼拝堂は大幅に改修され、エル・グレコの5点の作品群の状態を伝える資料が何もないことから、これらの作品が置かれていた位置は、作品群の完成から2年間も続いた画家と施療院参事会の間の金銭上のトラブルを伝える記載[1][2]、施療院改修前の状態を見たコッシオ (Cossio) の記録から窺い知るのみである[1]。
この絵画は、マドリードにあったエンカルナシオン学院(通称ドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院)のための祭壇衝立の下段左側に配置されていたと思われるエル・グレコ円熟期の作品[4][5]『羊飼いの礼拝』 (ルーマニア国立美術館、ブカレスト) から羊飼いを削除し、場面を簡素な円形にしたものである。エル・グレコは「キリストの降誕」の主題を何度も描いているが、本作は聖家族のみを表した唯一のヴァージョンである[3]。左側の陰の部分ではロバが場面を凝視している一方、前景では前面短縮法で表された頭部を持つ牛が場面を見上げている。牛の角は、円形の画面の曲線に呼応している[3]。
カリダー施療院の連作
脚注
参考文献
- 『エル・グレコ展』、国立西洋美術館、東京新聞、1986年
- 大高保二郎・松原典子『もっと知りたいエル・グレコ 生涯と作品』、東京美術、2012年刊行 ISBN 978-4-8087-0956-3
外部リンク
- キリストの降誕_(エル・グレコ)のページへのリンク