受胎告知_(エル・グレコ、倉敷)とは? わかりやすく解説

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受胎告知 (エル・グレコ、倉敷)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/22 10:11 UTC 版)

 

『受胎告知』
スペイン語: La Anunciación
英語: Annunciation
作者 エル・グレコ
製作年 1590年ごろ-1603年
種類 キャンバス上に油彩
寸法 109.1 cm × 80.2 cm (43.0 in × 31.6 in)
所蔵 大原美術館倉敷市

受胎告知』(じゅたいこくち、西: La Anunciación: Annunciation) は、ギリシアクレタ島出身のマニエリスム期のスペインの巨匠エル・グレコが1590年ごろから1603年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。洋画家児島虎次郎パリで購入した作品で[1]、現在、倉敷市にある大原美術館に所蔵されている[1][2]。主題はエル・グレコが生涯に繰り返し取り組んでだもので (エル・グレコの『受胎告知』を参照)、米国オハイオ州トレド美術館、およびハンガリーブダペスト国立西洋美術館には、サイズ的にも構図的にも本作と類似した同主題作が所蔵されている[2]

作品

新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (1章26-38) によれば[3]、ある日、大天使ガブリエル聖母マリアのもとに現れ、「おめでとう、恵まれた方。あなたは神の恵みにより、男の子を産みます。その子をイエスと名付けなさい」と彼女が神の子を授かることを告げる[3]。マリアは驚きながらもイエス・キリストの母としての役割を受け入れ、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」と答える[3]

本作には、画面上方から白百合を手にした大天使ガブリエルが雲に乗って登場している。祈禱台に向かって腰をかけ読書をしていたマリアはガブリエルの出現に驚き、振り返って見上げている[2]。2人の配置は、イタリア時代に描かれたと考えられるプラド美術館 (マドリード) の『受胎告知』およびティッセン=ボルネミッサ美術館 (マドリード) の『受胎告知』と基本的に一致する。しかし、空間構成はまったく異なり、これらマドリードにある初期の2点では合理的な透視図法ヴェネツィア派風の光り輝く湿潤な大気の表現に関心が向けられている。一方、本作はトレド美術館、ブダペスト国立西洋美術館の作品同様、二義的なモティーフはすべて排除され、マリアとガブリエルの間で演じられる神秘のドラマに焦点が当てられている[2]

本作、トレド美術館、ブダペストの作品は類似しているとはいえ、微妙な相違点がある。ブダペストの作品は各モティーフの形態感覚が堅固で、マリアの表情も厳しく、ガブリエルの衣も力強く描かれているが、全体に一種のぎこちなさも見られ、やや統一性が欠けているように見える[2]。トレド美術館の作品はマリアの表情がやや弱いが、全体にソフトで調和もとれ、衣襞などは軽く描かれているため、ブダペスト作品のような構築性こそ欠けているが、スケッチ的な魅力を持つ。一方、大原美術館の本作は、強い表現を追求している点でブダペストの作品を発展させたように見えるが、やや縦長のマリア像はむしろトレド美術館の作品に類似している[2]。本作の最大の特徴は、画面全体の明暗対比が強いことである。マリアの頭上には光輪 (宗教美術) が見られるが、エル・グレコの時代にはこのような描写の習慣はなく、これは後世に描き加えられたと見られる[2]。以上の点から判断すると、トレド美術館の作品が最初に、次いでブダペストの作品が描かれ、本作はこれとは別にトレド美術館の作品を元に描かれたと推測される[2]

ちなみに、ブダペスト国立西洋美術館のマリアンヌ・ハラシュティ=タカーチは、本作は色彩が硬く、彫塑性に欠け、また後世のものである光輪があることから、エル・グレコの息子ホルヘ・マヌエル・テオトコプリの作品であると見なしている[2]

ギャラリー

 

脚注

  1. ^ a b 受胎告知”. 大原美術館公式サイト (日本語). 2025年7月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 『エル・グレコ展』、1986年、196-197頁。
  3. ^ a b c 大島力 2013年、104頁。

参考文献

外部リンク




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