聖イルデフォンソ (エル・グレコ、エル・エスコリアル)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/11 03:18 UTC 版)
スペイン語: San Ildefonso 英語: Saint Ildefonsus |
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作者 | エル・グレコ |
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製作年 | 1609年 |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 222 cm × 105 cm (87 in × 41 in) |
所蔵 | エル・エスコリアル修道院、マドリード近郊 |
『聖イルデフォンソ』(せいイルデフォンソ、西: San Ildefonso、英: Saint Ildefonsus)は、ギリシア・クレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコが1609年に制作したキャンバス上の油彩画である。この絵画と対作の『聖ペテロ』は、トレドのサン・ビセンテ教会 のために制作された。以前、この絵画は、教皇エウゲニウス1世、または聖ブラシウスを表していると誤って見なされた。現在、マドリード近郊のエル・エスコリアル修道院に所蔵されている[1]。
作品

この絵画に描かれている人物は、7世紀のトレド大司教で、トレドの守護聖人の聖イルデフォンソである[2][3]。彼は『完全無垢な処女聖母マリア』を著して、異教徒に対して聖母マリアの擁護論を展開した[1][2][3]。イルデフォンソによる聖母の幻視は、スペイン絵画において表される。彼は、トレド大聖堂の司教用玉座に座っていた時に天使に付き添われた聖母を見たと伝えられる。彼が近づくと、聖母は彼に天のカズラを投げ与えたという[1]。そのため、イルデフォンソは天使に囲まれた聖母からこの衣服を受け取る場面が描かれるのが普通であり[3]、エル・グレコの『トレドの景観と地図』 (エル・グレコ美術館では、まさにその場面が描かれている。一方で、エル・グレコは、イリェスカスのカリダー施療院蔵の『聖イルデフォンソ』でイルデフォンソが聖母の彫像を見ている姿も描いている[2]。
画面のイルデフォンソはカズラ、パリウム、ミトラを身に着け、司教の杖と開かれた本を持っている。衣服は彼の身体を強調しており、ミケランジェロがエル・グレコに与えた影響を示している。イルデフォンソは左側から照明を当てられている。一方、対作の『聖ペテロ』には右側から光が当たっている[1]。このことに加え、両作品の上部がアーチ型 (部分的に切断されている) になっていることは、両作品が窓、あるいは中央の絵画の左右両脇に祭壇画を構成するべく配置されたことを示唆する。祭壇画であれば、中央の絵画はほぼ間違いなく「無原罪の御宿りの聖母」であったと思われる[1]。かくして、『聖ペテロ』はその中央の絵画の左側、本作『聖イルデフォンソ』は右側に掛けられたことであろう。しかし、当初からこれら2作品は複製によって置き換えられたため、一度でもサン・ビセンテ教会の礼拝堂に掛けられたとは思えない[1]。
関連作品
脚注
参考文献
- 『エル・グレコ展』、国立西洋美術館、東京新聞、1986年
- 藤田慎一郎・神吉敬三『カンヴァス世界の大画家 12 エル・グレコ』、中央公論社、1982年刊行 ISBN 4-12-401902-5
- ISBN 84-9550-344-1. ÁLVAREZ LOPERA, José, El Greco, Madrid, Arlanza, 2005, Biblioteca «Descubrir el Arte», (colección «Grandes maestros»).
- Taschen, 2003. ISBN 978-3-8228-3173-1. SCHOLZ-HÄNSEL, Michael, El Greco, Colonia,
外部リンク
- Web Gallery of Artサイト、エル・グレコ『聖イルデフォンソ』 (英語)
- «San Ildefonso». [Consulta: 09.01.2011]. ArteHistoria.com.
- 聖イルデフォンソ_(エル・グレコ、エル・エスコリアル)のページへのリンク