発表と受容のあり方
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 08:28 UTC 版)
#社会の混乱の節で取り上げたギリシャ・メキシコ・ペルーの例が大きな契機となって、1983年にUNESCOとIASPEIが共同で11か国の専門家による討論会を開催した。ここでは、"地震予知憲章"とも呼べるような予知の指針が示されている。 予知の内容として、地震発生を場所-期日-マグニチュードに関する確率的期待値として表現するよう努めるべきである。 予知の評価として、予知を行う者は地震学界の適切な支持を得るべきである。 予知の発表・伝達として、予知の情報を直接マスメディアに伝えることは不必要な混乱を起こす原因になる場合があるため、予知を行う者はその情報を対応する政府機関にまず提供するべきである。 外国地域の予知を行う場合、予知の結果生じる社会的・政治的な影響について研究を始める前に熟慮すべきである。当該国の科学者の協力を要請するのが理想だが、最低限、科学者や行政担当者が研究の進展を把握できるよう配慮する必要がある。 しかし、IASPEIの委員会として開かれた「市民保護のための国際地震予測に関する検討委員会(CCEP)」の勧告では、上記の具体的手順がいまだ確立されていないことが明記されている。これまでの研究では大地震が高確率で発生すると予測される環境下で判断を下すことが想定されていたが、現状はそのような決定論的予知ができるには至っておらず、確率論的予測しか通用しない低確率の環境下、例えばラクイラ地震の直前のような環境下においても効果的な手法を確立すべきとされた。勧告では、1例として、費用便益分析などの客観的な解析を通して、どの時点で防災行動を起こすべきかというしきい値を、地震の発生確率に結び付けて決定する手法が挙げられたが、これを含めた「防災行動を含めた意思決定のために、定量的および透明性のある手順を確立すべきである」とされた。なお、同勧告では低確率の環境下で比較的成功しているものとして余震の予測を挙げており、この経験を生かすことが期待されると述べられている。 上述のように、政府機関が権限をもって情報に信頼性を持たせなければいけないとする人がいる一方、そうした権限の集約が学者による独自の予知手法の開発を妨げるとする人もいる。 ただし、地震予知情報というのは、たとえ公的組織や委員会等から発信されるものであろうが、内容が不正確であれば流布されることによって社会的被害が拡大する可能性がある。ラクイラ地震では、これが実際に問題となった。
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