病歴と身体所見からの情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:12 UTC 版)
「ニューロパチー」の記事における「病歴と身体所見からの情報」の解説
どの系が侵されているか? 患者の症状や徴候が運動神経、感覚神経、自律神経かこれらの複合かを見極めることである。多くのニューロパチーは感覚性である。運動症状のみならば運動性ニューロパチー、ミオパチー、神経筋接合部疾患を考慮する。 筋力低下の分布 筋力低下の原因は四肢の遠位だけなのか、近位と遠位の両方なのか、筋力低下は局所性で非対称性なのかあるいは左右対称なのかが重要になる。たとえば左右対称で近位、遠位の筋力低下があり感覚障害を伴う場合は炎症性の多発ニューロパチーを疑う。これらの代表疾患はギラン・バレー症候群や慢性炎症性脱髄性多発神経炎が該当する。また非対称性や多巣性パターンの筋力低下が見られる場合は鑑別が絞り込めることもある。感覚障害やその徴候がなく、筋力低下が週や月単位で悪化する場合は運動ニューロン病が疑われる。筋萎縮性側索硬化症が有名であるが治療可能な多巣性運動ニューロパチーの除外が重要である。非対称性で亜急性または急性の運動と感覚の障害をきたす患者では神経根症、神経叢症、圧迫性単ニューロパチー、多発性単ニューロパチーを考慮する。 感覚障害の性質 C線維の伝達する灼熱感や局在のはっきりしない痛み、Aδ線維の伝達する電撃性の痛みなど感覚障害の性質がニューロパチーの重要な情報となることがある。痛覚と温度覚が失われる一方で筋力と位置覚、振動覚、腱反射保たれ伝導速度も正常な場合は最も考えやすいのは小径線維ニューロパチーである。小径線維ニューロパチーは糖尿病性ニューロパチーやアミロイドーシスによるニューロパチーとして有名であるが、多くの小径線維ニューロパチーは原因不明となる。固有感覚の重篤な消失も鑑別診断を絞り込める情報である。振動覚の著しい低下と正常の筋力を認める場合は感覚性神経細胞障害や感あっ区制神経節障害を疑う。この感覚低下が非対称であった場合や足よりも腕のほうが障害が重篤な場合は感覚性神経細胞障害でみられるような長さ依存性ではない経過の疾患を示唆している。 上位運動ニューロン障害の徴候があるのか 左右対称性、遠位の感覚障害をしめしさらに上位運動ニューロンの徴候がある場合はニューロパチーを伴う亜急性連合変性症などの疾患を考慮する。ビタミンB12欠乏の亜急性連合変性症は最も有名であるが、銅欠乏、HIV感染、重篤な肝疾患、副腎脊髄ニューロパチー(副腎白質ジストロフィーの異型)などの疾患も考慮する。 時間的経過 急性(数日から4週)、亜急性(4週から8週)または慢性(8週)をこえる経過か、単相性か進行性かまたは再発性かという情報が重要である。多くの場合、ニューロパチーは緩徐進行性である。急性や亜急性を示す疾患としてはギラン・バレー症候群、血管炎、糖尿病やライム病が関係した神経根症が含まれる。慢性炎症性脱髄性多発神経炎やポルフィリン症では再発性の経過をとる。 遺伝性ニューロパチーが疑われるか 感覚症状がわずかであっても診察では相当の感覚障害が認められ、多年にわたる緩徐進行性の遠位部の筋力低下を示す患者では遺伝性ニューロパチー(シャルコー・マリー・トゥース病)を考える。足は弓型で変形し脊柱側弯症が見られることもある。患者だけではなく家族も電気生理検査ができると望ましい。 他の医学的問題をかかえていないか 糖尿病、全身性エリテマトーデスなど関連した医学的問題の問診は重要である。感染症の既往、手術(胃バイパス術と栄養欠乏性ニューロパチー)、薬物(中毒性ニューロパチー、アルコール)また義歯も安定剤に亜鉛が含まれており銅欠乏の原因になりえる。
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