生鮮食品の特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 20:26 UTC 版)
その他の理由として、生鮮食品が自動車輸送に転移しやすい性格を持っていたことが挙げられている。生鮮食品は傷つき腐敗しやすく、品目、形状が多種多様で、画一的な商品管理にはなじまなかった。農産物にとっては新鮮さが命であるが、軟弱野菜、高級果実、花卉、家畜の生体輸送、牛乳配送など鮮度低下率の大きな品目ほど、高速・安定輸送を求めた。スト前の時点で、生鮮食品全体の傾向として、季節によっては90 %がトラック輸送に切り替わっており、青果物に至ってはスト数年前の市場搬入調査にて自動車輸送が97 - 99 %に達していたため、輸送機関調査から省略されていた程であった。極一部の商品以外は鉄道輸送に依存するものは無くなっていた。 なお、組合が偵察に人をやって驚愕したエピソードのある築地市場は、1935年(昭和10年)に完成した当時としても古い建物で、本来トラック輸送に向いた設計がされていた訳ではなかった。しかし、ストの数年前から冬の降雪期には北日本からの貨車到着が遅延しており、これらに載った商品は「翌日売り」となって値が下がる問題があったので、トラック輸送が試行されていた。自動車の普及により1968年(昭和43年)に登場し、トラック輸送に適応した設計となっていた平和島の京浜トラックターミナルの場合、10トン、8トン積みの大型トラックが後楽園球場5倍の面積の敷地にひしめいていたという。そして、スト終息後も出入の台数が減少することはなかった。 なお、成城大学教授だった岡田清によれば、鉄道に依存した貨物は高いサービス水準を要しない原材料などの調達物流や荷主の運賃負担力の低い品であり、トン数ベースで国鉄貨物の56 %を占めていた専用線貨物がそれに該当する。対して、ストの標的になりやすい貨物は近代化の花形であったコンテナ輸送であった。上述のように生産から消費までのタイムスパンが短く、運賃よりサービス競争に重きが置かれる貨物を運んでいたからである。 ただしストが更に長引いていた場合には、世論や荷主の支持とは別に、内陸における灯油やガソリンの供給に支障を来たし、結果として内陸部の自動車交通に影響が出た可能性も指摘されている。
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