生物の保護とビオトープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 13:43 UTC 版)
「ビオトープ」の記事における「生物の保護とビオトープ」の解説
生態系の保護は昨今の時代の流れであるといっても過言ではない。その活動は政府レベルから市民運動のレベルまで様々である。先述の通りビオトープはこれらの活動と平行する形で普及してきた概念であり、密接な関係にある。 しかし、ビオトープの概念の難しさなどと相まって本来のビオトープ概念には該当しない、あるいは矛盾する活動も見られる。ホタルやトンボ、ツバメ、メダカ、アユなど象徴種を守ろう、という「ビオトープ保護活動」というものがある。象徴種はその名の通り「一般の人にとっての自然を代表する生物種」であり、それらを保護する意義は少なくない。しかし、ビオトープの考え方では「その種のみ」を保護する事は不可能であり、その種が生息する環境・生息空間全てを保護する必要があるとする。前述のツバメの例を言えば、『ツバメは保護したい。しかし蛾などの虫は駆除したい』という事例を考える。しかし、ツバメのビオトープにはその餌となる蛾が必要であり、蛾のビオトープのためには蛾が生きるための環境が必要になってくる。よって、このような事例は現実には不可能であるというのが、ビオトープの考え方である。 さらに、例えば生態系としては完結したビオトープを目指していても、外来種を導入する場合は注意が必要である。すなわちビオトープで育てている外国産の魚類や植物を外部に流出させれば当然生態系のバランスは崩れる。また国産の動植物であっても、何らかの理由でビオトープが維持できなくなった場合に周囲の自然環境に戻すような事は望ましくない。例えば国産の野生種メダカであっても、その遺伝子系統は地域によって多様であり異なる地域のメダカを放流すれば当然地域固有の遺伝子は汚染され悪影響を及ぼす危険がある(遺伝子汚染)。これは公共施設の大規模なビオトープに限らず、個人所有の睡蓮鉢や水槽といった小さなビオトープから流出させた場合でも同様である。何故なら、流出量は微量でも環境条件が整っていれば増殖し被害が拡大する可能性があるからである。
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