生成、基本的な反応、構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/28 02:24 UTC 版)
「超酸化物」の記事における「生成、基本的な反応、構造」の解説
超酸化物の酸素原子はそれぞれ酸化数が−1/2である。O−2 の O–O 結合距離は 6990133000000000000♠1.33 Å であり、それに対して、O2 では 6990121000000000000♠1.21 Å、O2−2 では6990149000000000000♠1.49 Å である。 O2 とアルカリ金属とを直接反応させることで、超酸化セシウム (CsO2)、超酸化ルビジウム (RbO2)、超酸化カリウム (KO2)、超酸化ナトリウム (NaO2) が生成する。7002500000000000000♠500 °C、7002300000000000000♠300 気圧以下の条件下では過酸化ナトリウム(Na2O2)が生成するので超酸化ナトリウム(NaO2)を生成するには500 °C、300気圧の高温高圧が必要である。Mg、Ca、Sr、Baなどアルカリ土類金属が酸素と反応した場合は相当する過酸化物塩が主生成物となり、副生成物(すなわち不純物)として相当する超酸化物塩が含まれる。 超酸化カリウムは O−2 試剤として通常採用される試薬である。純度は6999960000000000000♠~96%であり不純物としては過酸化カリウムを含む。 還元の過程では結合次数は O2 の2、O−2 の1.5、O2−2 の1へと変化する。 超酸化物とアルカリ金属との塩は橙〜黄色の結晶で乾燥状態では極めて安定である。しかし水に溶かすと、O−2 は速やかに不均化する。 2 O 2 − + H 2 O ⟶ O 2 ( g ) + HO 2 − + OH − {\displaystyle {\ce {2O2^- + H2O -> O2(g) + HO2^- + OH^-}}} 2 HO 2 − ⟶ O 2 ( g ) + 2 OH − {\displaystyle {\ce {2HO2^- -> O2(g) + 2OH^-}}} (律速) この反応において O−2 は強いブレンステッド塩基として作用し、最初は共役酸の HO2(ヒドロペルオキシルラジカル)が生成する。しかしその pKa は4.88であるため、中性条件のpH 7では超酸化物の大部分は O−2 イオンとして存在する。 固体の塩も加熱により分解する。 2 NaO 2 ⟶ Na 2 O 2 + O 2 ( g ) {\displaystyle {\ce {2NaO2 -> Na2O2 + O2(g)}}} この反応はスペースシャトルや潜水艦で使用される化学酸素発生装置で超酸化カリウムが酸素源として利用される原理となっている。あるいは超酸化物は消防隊員の酸素タンクの酸素源としても既に利用されている例がある。下記の反応のように閉鎖系で二酸化炭素の回収剤としても利用される。 4 MO 2 ( s ) + 2 CO 2 ( g ) ⟶ 2 M 2 CO 3 + 3 O 2 ( g ) {\displaystyle {\ce {4MO2(s) + 2CO2(g) -> 2M2CO3 + 3O2(g)}}} 溶液下の O−2 の反応性が詳しく研究されるようになるのは、O−2 の酵素反応をESR分光計で追跡したのが始まりである(生体における超酸化物の節で詳しく説明する)。 水溶液中では O−2 は不安定であるが、DMSO溶液中で、相間移動触媒の 16-C-6 で超酸化カリウムを可溶化した場合は安定化され溶媒との反応は遅い。また超酸化カリウムを炭酸ビステトラメチルアンモニウム ((Me4N)2CO3) とをメタセシスすると、純度6999930000000000000♠~93%で超酸化テトラメチルアンモニウム (Me4NO2) が得られ、これはアセトニトリルのような非プロトン溶媒に溶解する。 水溶液中で、用時調整で純度が高い O−2 を発生させるには、O2 のパルス放射線分解や過酸化水素水溶液の光分解が知られている。非水溶液での用時調整では分子酸素の電気化学還元や塩基による過酸化水素の分解が知られている。そしてDMSO溶液では酸素飽和下に塩基性アニリンによる生成反応も知られている。 2 PhNH 2 + 2 OH − + 3 O 2 ⟶ 2 O 2 − + PhN = NPh + H 2 O 2 + 2 H 2 O {\displaystyle {\ce {2PhNH2 + 2OH^- + 3O2 -> 2O2^- + PhN=NPh + H2O2 + 2H2O}}} 非水溶液下では O−2 はアルキルハライド等に対する求核的反応や、有機化合物に対して一電子酸化剤として反応が知られている。そして Cu2+ など幾つかのと錯体を形成する。
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