物理と原子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 09:09 UTC 版)
周期表上では、モスコビウムは第15族元素(プニクトゲン)であり、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマスの下に位置する。他のププニクトゲンは全て価電子が5つであり、ns2np3という最外殻電子配置を取っており、モスコビウムの場合は7s27p3という配置であると予測され、より軽い同族元素とある程度似た性質を持つと予測される。違いは、主にスピン軌道相互作用から来ていると考えられる。これは、重い元素では軽い元素と比べて電子が遥かに速く、光速に匹敵する速度で動くため、超重元素で特に相互作用が強くなるためである。モスコビウムの場合、7sと7pの電子エネルギー準位を下げ(対応する電子より安定させ)るが、2つの7p電子エネルギー準位は他の4つよりも多く安定化される。7s電子の安定化は、不活性電子対効果と呼ばれ、7p小軌道がより安定化された状態とあまり安定化されていない状態に「引き裂く」効果は、subshell splittingと呼ばれる。コンピュータ化学者は、この分割を、7p小軌道の軌道角運動量の1から1/2(安定度高)と3/2(安定度低)への変化と理解する。7p小軌道の分割を考慮して、モスコビウムの価電子配置は7s27p21/27p13/2と書かれることもある。これらの効果のため、モスコビウムの化学的性質は、他の第15族元素と違うものとなっている。 モスコビウムの価電子は、7sに2つ、7p1/2に2つ、3/2に1つと3つの小軌道に分かれる。前者2つは相対論効果で安定化し不活電子対として働くが、最後は相対論効果で不安定化し、化学結合に容易に参加する。従って、Tl+のように+1の酸化数を取りやすく、第1イオン化エネルギーは約5.58 eVと下に行くほど低くなるというニトロゲンの傾向と合致する。モスコビウムとニホニウムはどちらも準閉殻の外に1つの電子を持ち、金属状態の中を非局在化して金属結合の強さが同程度になるため、似たような融点と沸点を持つ(どちらも約400℃で融解し、1100℃で沸騰する)。さらに、予測されるイオン化ポテンシャル、イオン半径(Mc+:1.5Å、Mc3+:1.50Å)、Mc+の極性は、同族のBi3+よりもTl+と近い。原子量が大きいため密度の高い金属となり、その密度は、約13.5 g/cm3である。水素様モスコビウム原子の電子は非常に速く動くため、相対論効果のため、その質量は静止電子の1.82倍となる。一方、水素様ビスマス、水素様アンチモンの場合は、それぞれ1.25倍、1.077倍である。
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