無線のマルチパス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 15:25 UTC 版)
マルチパスは山や建物などがあることで反射や回折などが起きることや、電離層による反射と屈折、大気ダクト(英語版)などの空間現象により発生し、通信信号には不要な干渉や位相シフトを引き起こす。この干渉や位相シフトをフェージングと呼ぶ。 ファクシミリやテレビ放送ではマルチパスはジッターやゴーストを引き起こし、正当で主要なイメージの色あせた二重のイメージが見られる。より短い直線的なルートによってアンテナに届く信号と山や建物などによって反射し先述の信号より時間的に遅れてアンテナに届く信号(遅延波)を受信機が受信することによってゴーストは起こる。 FMラジオ放送においては、送信エリア内であっても、周辺のビル等の障害物が周囲にあると上述のように映像はないものの、音声にノイズが乗るなどの受信障害が起こる。この対策には、位相差給電アンテナが有効であるとされる。 レーダー処理においてマルチパスは目標のゴーストを引き起こし、レーダーの受信機を惑わす。通常の目標(これらの反射)のように動いてふるまうためこれらのゴーストは特にやっかいであり、そして受信機は正しい目標の反射(英: echo)を分離させることが困難である。 デジタル無線通信(例えばGSM)において、マルチパスがエラーを引き起こすことがあり通信の品質に影響をおよぼす。エラーはシンボル間干渉(ISI:inter-symbol interference)による。等価器はしばしばISIを修正するのに使われる。また、このマルチパス耐性が高い通信方式としては、OFDM方式があり、CDMA方式においてはレイク受信機などマルチパス対策が施された受信機も存在する。 短波を用いた無線通信では、気象条件によっては、送信地点から受信地点までを結ぶ経路が2つ存在することがある。1つは地球の表面を最短距離で結ぶ経路でショート・パスといい、もう1つは地球の裏側を通る経路でロング・パスという。また、地球を1 - 2周した電波が到達することもある。送信点からの電波が、ショート・パス、ロング・パス、地球を1 - 2周、といった複数の経路で伝わってきた場合、伝播距離の差により受信点ではこだまのように聞こえる。これはエコーとして知られている。 短波を用いた通信で、送信点と受信点とが互いに対蹠点にある場合、どの方位からでも同じ距離の無数の伝播経路が存在するため、安定した通信ができる。これを対蹠点効果(たいしょてんこうか、たいせきてんこうか)という。
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